- ハンドリガードの意味と赤ちゃんの行動について
- ハンドリガードと赤ちゃんの成長段階について
- ハンドリガード中の赤ちゃんへ注意したいこと
寝転んでいる赤ちゃんが、自分の顔の前に手を持ってきてじっと見つめているのを見たことはありませんか?
これはハンドリガードと呼ばれるもので、脳が発達している証拠で赤ちゃんにさまざまな力が身についてくるときに見られる仕草です。
この記事では、ハンドリガードとはなにか、赤ちゃんの成長段階とハンドリガードをしている赤ちゃんに対する注意点などを解説します。
赤ちゃんの動きについての知識を身に着け、心配や不安を少しでも軽減していきましょう。
目次
ハンドリガードは赤ちゃんの成長の証
ハンドリガード(Hand regard)とは、赤ちゃんが手をじっと観察し、揺らしたり舐めたりして感覚を確かめる行為です。
生後2か月ごろから見られだして4カ月ごろの赤ちゃんにハンドリガードをする様子が見られるようになりますが、これは「自分には体がある」「自分の体を動かせる」ことを意識的に学習していると考えられています。
赤ちゃんは自分の視界に初めて自分の体の一部が入ってきて不思議に思い、それが自分の体の一部だと気づきます。
その動作の中で、自分で自分の体を動かせることを理解し、観察しながらゆっくり動かして感触を確かめます。これらのすべてが繋がり、脳の中でコネクションを形成します。
わたし達は、手を舐めると唇や舌で舐めている感じがするのと同時に、手が舐められていることも感じますよね。
しかし、赤ちゃんはこれらの感覚を頭頂葉内でまだコネクションがありません。
そのため、動作で感じる感覚や動作は全て「未経験のこと」ではありますが、これを何度も繰り返すことで、脳内でコネクションされるようになります。
さらに、手を動かす運動は前頭葉、動く手を見る視覚は後頭葉に司ります。
脳の中で別々の場所、機能が一緒に動くことで違う感覚を統合していき、赤ちゃんは経験を積み学んでいきます。
ちなみに、観察や経験を積む対象は手だけではありません。
ハンドリガードと同じくフットリガードもあり、その場合は足を観察したり、動かしたり、舌で舐めたり、口に咥えたりします。
ハンドリガードでよく見られる仕草
ハンドリガードでは、以下の仕草がよく見られます。
- 自分の手をじっと見つめる
- 手を上下に動かす
- 手を目の前で揺らす
- 手や指を口の中に入れる
- 髪の毛をむしるような動きをした後に手のひらを見つめる
ハンドリガードでわかる発達の度合い
一般的に、ハンドリガードがでてきたら、赤ちゃんには次の能力がみについてきたと考えられます。
- 目でものを見る
- 体を自分で動かす
目でものを見る
ハンドリガードをするには、まず見たいものに焦点を合わせる力が必要です。
しかし生後間もない赤ちゃんは、見たいものに対して自力でピントを合わせられません。
赤ちゃんは生後1か月で「注視」、その後2カ月ころから「追視」ができるようになり、ハンドリガードを始めるときには自分の手に焦点を合わせられるようになっています。
体を自分で動かす
自力で動かせなかった体を、動かせる力を手に入れる時期です。
体を動かすには脳からの指令が必要ですが、それまでは脳が未発達で指令はだせず、自分の意思で動かせませんでした。
ハンドリガードができるころには、自力で手を動かして視界に入れ、観察できるようになっています。
赤ちゃんの体の成長段階1~3期
赤ちゃんの体の成長段階を1〜3期に分けて紹介します。
- 成長段階①:体の動きをコントロールできない時期
- 成長段階②:自分の体に気付き確かめる時期
- 成長段階③:外の世界に興味を持ち体を使いだす時期
成長段階①:体の動きをコントロールできない時期
生まれてから数カ月の間は、自分の意思で体を動かせません。
しかし、危険から身を守ったり姿勢を維持したりするためには体を動かしますし、原始反射を持っています。
原始反射とは生まれつきもっている反応行動のことで、たとえば赤ちゃんの手のひらに大人が指をのせると握り返す反応は「把握反射」です。
他にも「バンビスキー反射」や「モロー反射」などさまざまな反射があります。
関連記事:「モロー反射は赤ちゃんが行う自然な反応! 原因や発生時期と親ができる対応法を紹介」
原始反射は「脳幹」という原始脳でコントロールされていますが、発達が進むにつれて体を動かす役割は「脳幹」へとうつっていきます。
成長段階②:自分の体に気付き確かめる時期
原始反射が消えていくに従って、赤ちゃんは自力で少しずつ体をうごかせるようになっていきます。
いまだに自由自在とはいかないものの、明かりや音の方へ顔を向けたりするなど、興味や関心がみられるようになります。
この時期に出てくる動きがハンドリガードです。目で見ることと体を動かすことの動きが合わさるようになり、自分の体があることを認識します。
成長段階③:外の世界に興味を持ち体を使いだす時期
自分に手足があり、それを自由に動かせることがわかると、赤ちゃんからハンドリガードの動きはなくなっていきます。
この時期は興味対象が自分の体から外の世界へとうつる時期です。
目に見えたものをつかむ、だっこされている大人の顔を触るなど、自分の周囲を取り巻くものに手で触れ、口に入れて舐め、さまざまなものを確かめます。
この時期は、自分が動くことで世界がどう反応するかを楽しんでいるところですね。
ハンドリガードをしている赤ちゃんへの注意点
ハンドリガードを始めた赤ちゃんへの、接し方での注意点をみていきましょう。
次の2つには注意するようにしてください。
- 無理に止めない
- 爪の長さに気を付ける
無理に止めない
赤ちゃんは自分の体がどのようなものか、どう動くのかを学習中です。
そのため、手を口に入れたり物を叩いたりしていても無理に止めないようにしましょう。
中には衛生面を気にして、赤ちゃんが口に手をいれることを止めるべきか悩む方もいるでしょう。
しかし赤ちゃんは手の感触や視覚が未発達であるため、最も敏感な器官の舌や唇を使って手や指を刺激しながら、さまざまなことを学んでいる最中です。
衛生面のデメリットより発達を促すメリットの方が大きいと考え、優しく見守ってあげてください。
また、指しゃぶりもハンドリガードのひとつで、生理的な現象です。
3歳くらいまで続く子もいますが、指にタコができているほど強く吸っているなどでない限りは無理にやめさせる必要はありません。
爪の長さに気を付ける
赤ちゃんの爪は薄く尖っており、剃刀のようになっています。
自分の顔をひっかいてしまって血が出ることもあるため、爪が伸びていると危険です。
ハンドリガード中に口内や口周辺をケガしないよう、爪の長さはよく確認し、切っておくようにしましょう。
ハンドリガードの有無や時期には個人差がある
子どものハンドリガードが始まらないという場合でも、過剰に気にする必要はありません。
ハンドリガードは発達に応じてよく見られる仕草ではありますが、あくまでも成長の証のひとつです。
当然個人差がありますし、必ずハンドリガードを行うわけでもありません。もしかすると、大人が見ていないときに行っている可能性もあるでしょう。
しかしどうしても気になるという方は、検診のときなどに医者や保健師さんに相談してみてくださいね。
ハンドリガードは発達のしるし! 過度に心配せず優しく見守ろう
赤ちゃんが顔の前に手を持ってきて、じっとみつめたりゆらゆらと動かしたり口に入れたりしているなら、それはハンドリガードと呼ばれる仕草です。
成長の段階で見られる仕草で、ものに焦点を合わせて見られるようになったこと、自分の意思で体を動かせるようになっていることを表します。
真剣な表情で手を見る赤ちゃんは、本当に可愛いものですよね。手を口に突っ込んだり舐めたりするので唾で汚れますが、今は学習中なのだと理解し、ぜひそっと見守るようにしてくださいね。
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