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自己効力感とは?こどものモチベーションと行動、自己肯定感との違いを解説

知育・発育

自己効力感とは?こどものモチベーションと行動、自己肯定感との違いを解説
この記事の主な内容

自己効力感とは、特定の課題に対して「自分ならできる」と確信する力のことで、行動の直接的な原動力となります。ありのままの自分を認める「自己肯定感」が心の土台であるのに対し、自己効力感は具体的な成果や挑戦を支えるエンジンです。この力を高めるには、小さな成功体験の積み重ねや、周囲の適切な励まし、他者の成功を見る経験が不可欠です。

 

「うちの子はすぐに諦めてしまう」「新しいことに挑戦しようとしない」――。こうした悩みを持つ保護者の方は少なくありません。こどもが自ら一歩を踏み出し、目標に向かって粘り強く努力を続けるために必要なのは、単なるやる気ではなく自己効力感(セルフ・エフィカシー)という心理的な確信です。

これは、カナダ人心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した概念であり、現代の教育現場でも非常に重視されています。自己効力感が高いこどもは、失敗を恐れずに挑戦し、たとえ壁にぶつかっても「次はこうすればできる」と前向きに解決策を探ります。

一方で、この力は生まれ持った才能ではなく、日々の関わり方や環境設定によって後天的に育むことができるものです。この記事では、自己効力感の正体を解き明かし、こどもの自己肯定感を守りつつ、具体的な行動へと繋げるための実務的な接し方を解説します。

意欲的な行動を支える能力

意欲的な行動を支える能力

自己効力感と自己肯定感は混同されがちですが、心理学的な役割は明確に異なります。自己肯定感が「存在そのものへのYes」を指すのに対し、自己効力感は「遂行能力へのYes」を指します。

こどもの健やかな成長には、この両輪が適切に機能していることが不可欠です。どちらか一方が欠けても、安定したモチベーションを維持することは難しくなります。

存在の承認と能力の確信がもたらす相乗効果

自己肯定感とは成果や能力に関わらず「自分には価値がある」と思える心の土台です。これに対し、自己効力感は「この課題をやり遂げられる」という具体的な自信、つまり行動のエンジンです。

土台(自己肯定感)が安定しているこどもは、失敗しても「自分には価値がない」とまで落ち込まず、エンジン(自己効力感)を再始動させる準備が整います。

逆に、自己効力感だけが高く自己肯定感が低い場合、こどもは「成果を出せない自分には価値がない」というプレッシャーに晒され続け、燃え尽き症候群に陥るリスクがあります。日々の関わりでは、「そのままのあなたが好きだよ」という情緒的なサポートと、「あなたならこの問題を解けるよ」という能力への信頼を、場面に応じて使い分けることが求められます。

参考記事:子どもの自己肯定感は親が育む!子どもの自己肯定感を高める接し方について解説

根拠のない自信を確信に変えるプロセス

幼児期に見られる「自分は何でもできる」という全能感は、成長とともに現実の壁にぶつかり、揺らぎ始めます。この「根拠のない自信」を、実際のスキルに基づいた「具体的な確信(自己効力感)」へと移行させるのが、学童期における重要な課題です。そのためには、抽象的な褒め言葉ではなく、こどもが自分の力で変化を起こした事実を一つずつ確認していく作業が必要です。

例えば、「頑張ったね」という言葉に加え、「毎日5分練習したから、指がスムーズに動くようになったね」と事実を指し示すことで、こどもは「自分の行動が結果を変えた」という論理的な確信を得ます。このように因果関係を言語化して伝えることが、根拠のない自信を、揺るぎない自己効力感へと洗練させていくのです。

行動のブレーキを外すための二重構造

こどもが行動を起こすとき、心の中では二つの判断がなされています。一つは「これをすれば結果が出るか(結果期待)」、もう一つは「自分はそれを実行できるか(効力期待)」です。自己効力感とは後者の「効力期待」を指します。

たとえ勉強すれば成績が上がると分かっていても(結果期待)、自分に勉強を続ける能力がないと感じていれば(効力期待)、行動には至りません。

行動のブレーキを外すためには、この効力期待を高める必要があります。そのためには、課題の難易度をこどもの現在の能力に合わせて調整し、「これなら自分にもできそうだ」と思わせる環境設定が実務上の肝となります。まずは小さな「できた」を積み重ねることで、心のブレーキを外し、自発的な行動を促す土壌を作ります。

成功の予感を引き出す直接的体験と周囲の環境

成功の予感を引き出す直接的体験と周囲の環境

自己効力感を形成する要因の中で、最も強力なのが「達成体験」です。自分の力で成し遂げたという事実は、何物にも代えがたい自信の種となります。大人の役割は、こどもが成功するのをただ待つのではなく、成功しやすい状況を戦略的に用意してあげることにあります。

達成感を最大化するスモールステップの設計手順

こどもが巨大な壁を前に立ちすくんでいるときは、課題を細分化するスモールステップの導入が有効です。一気に「逆上がりができる」を目指すのではなく、「鉄棒にぶら下がる」「足を蹴り上げる」といった小さな目標を設定します。各ステップは、こどもが8割程度の確率で成功できる難易度にするのが理想的です。

課題の細分化(スモールステップ)の例

大きな目標最初のステップ次のステップ
読書感想文を書く面白かった場面に付箋を貼る付箋の箇所について口頭で話す
計算ドリル1冊終了1日3問だけ解く間違えた問題だけ解き直す
片付けの習慣化使ったおもちゃを1つだけ箱に戻すおもちゃの住所(定位置)を決める

小さな成功を積み重ねるたびに脳内では快楽物質であるドーパミンが放出され、「もっとやりたい」という意欲が湧いてきます。この成功のサイクルを意図的に回すことが、自己効力感向上のための実務的な最短距離です。

失敗を「不運」ではなく「学習データ」として扱う作法

どれほど慎重に進めても、失敗は起こります。このとき、大人が「残念だったね」「運が悪かったね」と接してしまうと、こどもは失敗を自分のコントロール外にあるものと捉え、無力感を感じます。

心理的な安全性を保つためには、失敗を次への改善材料(学習データ)として扱う姿勢を見せることが重要です。

「この方法ではうまくいかないことが分かったね。次はどう変えてみる?」と問いかけることで、失敗は成功へ至るプロセスの一部に変わります。大人が自身の失敗をオープンにし、どうリカバーしたかを共有する姿を見せることも、こどもの「失敗への恐怖」を和らげ、自己効力感を守ることに繋がります。

なお、こどもの特性や周囲の環境によって適切なフォローの仕方は異なるため、状況が複雑な場合は専門家へ早期に相談することが、こどもの意欲を削がないための布石となります。

同年代の成功から学ぶ代理経験の有効活用

自己効力感は、自分自身の体験だけでなく、自分に似た境遇の人が成功する姿を見ること(代理経験)でも高まります。自分と似たような能力や年齢の友達が「できた!」という瞬間を目撃すると、こどもは「あの練習をすれば自分にもできるかもしれない」と想像し、心理的なハードルが下がります。

家庭内では、歳の近い兄弟や、物語の主人公などのエピソードを活用するのが効果的です。「〇〇ちゃんも最初はできなかったけど、練習してできるようになったんだって」という情報は、こどもにとって強力なモデリング対象となります。ただし、比較してこどもを卑下するのではなく、あくまで「可能性の提示」としてポジティブに紹介することが、自己効力感を引き出すための鉄則です。

子供の自発的な挑戦を促す声掛け

子供の自発的な挑戦を促す声掛け

「あなたならできる」という言葉による働きかけは、言語的説得と呼ばれ、自己効力感を高める重要な要素の一つです。しかし、空疎な励ましはこどもに見透かされます。信頼関係に基づいた、具体的かつ誠実な言葉選びが求められます。

過去の事実に基づいた根拠ある励ましの技術

こどもが不安を感じているとき、ただ「大丈夫、できるよ」と言っても、不安は解消されません。効果的な励ましとは、こどもの過去の成功事実を証拠として提示することです。「あの時、難しい漢字を練習して覚えられたよね。だから今回のテストも練習すれば大丈夫だよ」といった具合です。

根拠を伴う言葉は、こどもの記憶を呼び起こし、客観的に自分の能力を再認識させます。この「根拠ある励まし」を繰り返すことで、こどもは自分の中に眠っているリソース(資源)を信頼できるようになります。親が「こどもの成功の記録係」になり、些細な成長も見逃さずにストックしておくことが、実務的な支援の核となります。

身体的な緊張を「やる気のサイン」に書き換えるリフレーミング

発表会や試験の前、こどもがドキドキしたり手が震えたりするのは自然な生理反応です。しかし、こどもがこれを「怖い」「自信がない」というネガティブな兆候と捉えると、自己効力感は急降下します。ここで大人が行うべきは、その感覚の解釈を変えるリフレーミングです。

「ドキドキするのは、体が本気を出そうと準備している証拠だよ。プロのアスリートも同じなんだって」と伝えてみましょう。身体的な興奮(生理的状態)を、恐怖ではなく「エネルギーの充足」として再定義することで、こどもは自分の体調を味方につけることができます。自分の心身の状態を前向きに捉える力も、自己効力感の大切な一部です。

努力の過程を言語化して自信を定着させるフィードバック

物事がうまくいった直後、その成功の要因が「たまたま」ではなく「自分の行動」にあると確信させるフィードバックが、自己効力感の定着を助けます。こどもが成果を出したとき、大人は間髪入れずに努力のプロセスを言語化してフィードバックしてください。

「あきらめずに3回やり直したのが、今回の成功に繋がったね」といったフィードバックは、こどもに成功のレシピを教えることと同じです。これにより、次に同じような困難に出会った際も、「あの時のようにやり直せば道が開けるはずだ」という効力期待が生まれます。

言葉によって成功のパターンを認識させることが、一時的な自信を、持続的な自己効力感へと変換させます。

自己効力感の低下が招く消極性

自己効力感の低下が招く消極性

自己効力感が著しく低下すると、こどもは「自分は何をやっても無駄だ」という無力感に支配され、挑戦自体を避けるようになります。これは怠慢ではなく、これ以上傷つかないための防衛本能です。こうした状況では、通常とは異なる慎重なアプローチが必要となります。

挑戦を拒む子供の心理的防衛反応への理解

「どうせできない」「やりたくない」という言葉の裏には、失敗して恥をかきたくない、親を失望させたくないという防衛反応が隠れています。ここで無理に励ましたり叱ったりすると、こどもはますます心を閉ざします。まずは「挑戦するのは怖いよね」と不安な気持ちをありのままに受容することが、回復の第一歩です。

自己肯定感が土台として機能していれば、この防衛反応は一時的なもので済みますが、土台そのものが揺らいでいる場合は注意が必要です。こどもが回避行動を取るのは、それだけ高いプレッシャーを感じている証拠かもしれません。原因が多岐にわたる場合、早期に専門家を交えて現在のストレス要因を整理することが、親子共倒れを防ぐために有効です。

無力感を解消するためのコントロール感の回復

無力感から抜け出すためには、自分の力で環境を操作できるというコントロール感を取り戻す必要があります。大きな目標は一旦忘れ、日常生活の極めて小さな選択権をこどもに戻しましょう。「今日のおやつはどっちにする?」「どの服を着ていく?」といった些細な決定を尊重することから始めます。

自分で選んで、その通りになったという実感が、枯渇した自己効力感を少しずつ潤していきます。教育的な正解よりも、こどもが「自分の意志が反映された」と感じる経験を優先してください。この「自分でハンドルを握っている感覚」が、再び大きな挑戦へと向かうためのエネルギー源になります。

プレッシャーを排除して興味関心に寄り添う見守り

自己効力感が低下している時期は、大人の「期待」が最も重い毒になります。「あなたならできるはず」という励ましすらも、今のこどもにとっては負担になり得ます。この期間は、成果への関心を一旦脇に置き、こどもが純粋に興味を持っていることにただ寄り添う「静かな見守り」に徹してください。

好きなゲームのこと、虫のこと、何でも構いません。こどもが夢中になれる分野では、自然と自己効力感が働きやすくなります。そこでの「楽しい」「もっと知りたい」というプラスの感情を大切に育むことで、心のガソリンが充填されるのを待ちましょう。大人が焦らず、こどもの回復力を信じて待つ姿勢こそが、最良の支援となります。

よくある質問

褒めすぎると、失敗したときの反動が怖くありませんか?

結果(才能や得点)だけを褒め続けていると、確かに失敗への恐怖が強まります。しかし、自己効力感を育むための「プロセスや工夫」を具体的に褒めていれば、その心配は少なくなります。

むしろ、「失敗してもやり方を変えれば克服できる」という自己効力感が育っていれば、失敗は反動ではなく、次の挑戦へのステップとして機能します。褒める対象を「結果」から「プロセス」に変えることが解決の鍵です。

自己効力感が低い子に、無理やり習い事をさせるのは逆効果ですか?

高い確率で逆効果となります。本人の意欲がない状態での強制は、失敗体験や「やらされている感」を強め、自己効力感をさらに損なう可能性が高いです。自己効力感は「自発的な行動」によって最も高まります。

まずはこどもが「これならやってみたい」「できそうだ」と思える分野、あるいは既に得意なことから広げていくのが、実務上の正攻法です。

親自身が自信がない場合、子供に悪影響を与えますか?

親が完璧である必要はありません。むしろ、親が自分の苦手なことに挑戦し、失敗しても「次はこうしてみよう」と明るく試行錯誤する姿を見せることは、こどもにとって最高の代理経験(モデリング)となります。

親が自分の自己効力感を育もうとする姿勢そのものが、こどもに「人はいつでも成長できる」という強力なメッセージを伝えます。親自身の自己肯定感と自己効力感を大切にすることが、結果としてこどもへの好影響に繋がります。

まとめ

こどもの自己効力感は、将来の予測困難な時代を生き抜くために最も重要な「生きる力」の一つです。ありのままの自分を愛する自己肯定感を土台にしつつ、日々の生活の中で「自分の行動が世界を変えられる」という手応えを一つずつ積み上げていくこと。

そのために、大人はスモールステップを用意し、事実に基づいたフィードバックを送り、失敗を共に学ぶパートナーであり続ける必要があります。

今日からできることは、こどもが何かを成し遂げたときに「すごい」という抽象的な言葉を、「〇〇という工夫をしたからできたね」という具体的な事実に置き換えてみることです。大人の言葉の解像度が上がれば、こどもの自己効力感も比例して高まります。

もし、こどもの意欲の低下や接し方に深い不安がある場合は、専門家に相談して客観的な視点を取り入れることで、より確実な支援が可能になります。こどもの持つ無限の可能性を信じ、共に一歩ずつ歩んでいきましょう。

参考文献

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