汗をかくトレーニングや運動後に、冷たいビールを飲みたい!そう考えるトレーニーはたくさんいるでしょう。
医学的に「アルコールは筋肉を分解する」と認められています。しかし、では筋トレをする人は一杯のお酒も厳禁であるかと言えば、実はそんなことはありません。
この記事では、お酒と筋力の低下に関して解説します。お酒が筋力の低下を招く理由や、筋肉の成長に影響の少ないお酒との付き合い方について、みていきましょう。
目次
お酒と筋肉は相性が悪い
アルコールは筋肉にとって悪影響を及ぼす、というのは大前提です。
筋肉を育てるためにはアルコールを飲まないに越したことはありません。
その理由は後半で詳しく説明しますが、お酒を飲むことで「筋肉合成の阻害」や「筋肉の分解」、「脱水症状や栄養不足」を引き起こすためです。
ただし、1杯の飲酒が体に大きな影響を与えるわけではない、という研究結果もあります。
これはマシュー・J・バーンズ氏による「飲酒後の筋トレ結果」の調査で判明しました。
【調査内容】
健康な男性10人に6杯のアルコール飲料を飲ませた後で筋力と筋持久力のテストをした結果、飲酒しなかった場合と比較して、筋力や筋肉への影響はなかったと結論づけた(無酸素運動のパフォーマンスへの影響は認められない)。
つまり、アルコールが筋肉を分解するということは事実ではありますが、量によっては筋肉への影響は見られないということです。
参考:National Library of Medicine「A low dose of alcohol does not impact skeletal muscle performance after exercise-induced muscle damage」
筋肉に影響がほとんどないとされる飲酒量とは
アルコールへの耐性については、性別・人種・体質などが関係するため人によって異なります。
そのうえで、前述したマシュー・J・バーネス氏らによる研究では「体重×0.5gのアルコールであれば、ほとんど筋肉に影響がない」と発表されています。
体重1kgあたり0.5gまでのアルコール摂取に抑えることで、筋肉への悪影響を最小限に抑えられる可能性があります。
たとえば体重70㎏の人の場合、アルコール35gまでならさほど影響を受けません。アルコール35gに相当する飲料は以下の通りです。
- ビール(5%):約875ml
- ウイスキー(40%):約110ml
- ワイン(12%):約365ml
ビールで言えば生ジョッキ1杯、ウィスキーやワインではグラス1杯程度ですね。
繰り返しますが、お酒の分解能力には個人差があるため、体重1kgあたり0.5gまでのアルコール摂取は目安にして、適度な飲酒を心掛けるようにしてください。
ただし、酔うというのはまた別問題なので、運動前後の飲酒は推奨しないというのが一般的です。
参考:National Library of Medicine「A low dose of alcohol does not impact skeletal muscle performance after exercise-induced muscle damage」
お酒が筋力の低下を招くと言われる5つの理由
お酒が筋力の低下を招く理由については、以下の5つが考えられます。
- 筋タンパク質の合成を妨げる
- テストステロンの分泌量を減らす
- ストレスホルモンの分泌量を増やす
- 脱水と栄養不足をもたらす
- 睡眠の質を悪くする
筋タンパク質の合成を妨げる
筋肉量を維持したり筋肉を成長させたりするには、筋タンパク質の合成が必要です。
筋線維は筋トレで損傷を受け、それが修復される過程でより強く太くなっていきます。この過程が「筋タンパク質合成」と呼ばれるものです。
ところがアルコールを摂取すると、筋肉の分解作用がある「mTOR(タンパク質キナーゼ)が活発化するため、筋タンパク質合成が邪魔されてしまいます。
テストステロンの分泌量を減らす
テストステロンは男性ホルモンの一種としてよく知られていますが、筋肉の成長に非情に重要なホルモンでもあります。
筋トレをすると男女に関係なく分泌され、筋肉生成を促すほか、エネルギー不足による筋肉の分解の抑制もしてくれます。
ところが、お酒を大量に飲むことによって、テストステロンの分泌量が減少してしまうのです。日ごろから飲酒量が多いという方は、適量を心掛けるようにしましょう。
ストレスホルモンの分泌量を増やす
お酒を飲むと、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンの分泌量が増加します。
人がストレスを感じた際にはコルチゾールが分泌され、エネルギー確保のためのタンパク質分解へと進みます。
つまり、このホルモンの分泌が慢性的に高くなってしまうと、筋肉量が減少しやすくなってしまうのです。
コルチゾールが長期間多く分泌されると筋トレによる筋肉損傷の回復が遅れ、筋力低下につながります。
脱水と栄養不足をもたらす
摂取したアルコールを分解するために、体は多くの水分を使用します。
また、アルコールには利尿作用があるため、飲むことによって体内からどんどん水分が失われてしまいます。
筋肉自体にも水分が多く含まれており(約70%)、それは栄養伝達のために使われています。つまり、脱水症状があると筋肉への栄養伝達が悪くなってしまうのですね。
お酒は筋肉に脱水と栄養不足をもたらすだけでなく、脱水症状によるパフォーマンスの低下や怪我のリスクを高めるといった影響もあります。
睡眠の質を悪くする
お酒は睡眠の質を低下させ、体が十分に回復するのを妨ぎます。
筋肉の回復(超回復)は睡眠中に行われるため、お酒によって睡眠の質が低下すると回復が遅れ、筋肉の減少につながってしまいます。
筋力低下を招きにくいお酒の種類と飲み方
お酒は筋肉に悪影響を及ぼしますが、前述したように、完全悪ではありません。飲酒量によっては筋肉への悪影響が認められないこともあるほか、運動の種類によっても影響は異なります。
そして、お酒好きな方にとっては禁酒することによってストレスが増大したり、トレーニングのモチベーションが低下したりといったリスクもあるでしょう。
そのため、お酒をどうしても飲みたいという方は、お酒の種類を選び、飲み方を工夫することをおすすめします。以下の3つを実践してみてください。
- 蒸留酒を飲む
- お酒と同量のお水も飲む
- 量と頻度を調節する
蒸留酒を飲む
飲むお酒の種類に注目してみましょう。
糖質が高いビールや日本酒、ワインなどの醸造酒は筋肉のことを考えると避ける方がよいでしょう。
おすすめは、糖質がほとんど含まれていない焼酎やウィスキーなどの蒸留酒です。
焼酎やウィスキーを水や炭酸で割り、ゆっくりと飲むようにしましょう。アルコール量を無理なく減らせるうえに、脱水症状にもなりにくい飲み方です。
お酒と同量のお水も飲む
お酒を飲む際には一緒にお水も用意して、アルコールによる脱水を防ぎましょう。
水分補給を十分に行うことは筋肉の回復を助けるだけでなく、肝臓の負担も減らし、二日酔いを防止します。
量と頻度を調節する
少量であればお酒は筋肉に悪影響を及ぼさないと調査結果が発表されていますが、飲酒頻度が多ければやはり影響がでやすくなります。
また、筋トレ後は喉の渇きもあり、アルコールの吸収スピードが早くなります。
その結果、より脱水症状も引き起こしやすくなるため、トレーニング後の飲酒はおすすめしません。
そこで飲酒頻度を減らすため、トレーニングの日には禁酒することを検討してみましょう。
そうすると自然に休肝日を週に2、3回設けることになり、飲酒頻度を減らせるうえに、筋肉の成長には影響がありません。
筋力を落としたくないならお酒との付き合い方を考えよう
筋トレをしていても、お酒は飲めます。ただし、量と頻度、飲むタイミングに注意を払うようにしましょう。
筋肉の成長とお酒を楽しむ時間をうまく両立できるように工夫し、自分に合った方法をみつけてくださいね。