健康のためやダイエットのために、水をたくさん飲むとよいと聞いたことがある方は多いでしょう。多くの研究結果から、1日に2リットル以上の水を飲むことは健康によい影響を与えると認められています。
しかし、なぜ水分摂取が大切なのか、2リットル以上という根拠は何なのかについては、きちんと理解している方はあまりいないようです。
そこでこの記事では、水を2リットル飲む方がよいとされる根拠や水を飲むことによるメリット、自分の必要最低摂取量の計算方法、飲む際のタイミングや注意点などを解説します。
目次
なぜ「水を1日2リットル飲む方と良い」と言われているのか
人の体は約60%の水分でできています。実のところ、人間の脳と心臓は4分の3が水分、肺は83%が水分、骨も30%程度は水分でできているのです。
水は体の中で、以下のような役割を持っています。
- 体温を調節する
- 身体内で生化学反応を起こす
- 血液量を維持して全身の細胞へ栄養を届ける
- 老廃物を排出する
- 関節の動きを滑らかにする・関節への衝撃を和らげる
そのため、十分な水分が必要なのですね。
健康のために1日2リットル以上の水分補給が必要と言われていますが、その根拠は「人は1日に2リットル以上の水を失っているから」です。
人は1日に2.5リットル分を尿・便や汗、呼吸などで失ってしまいます。
では2.5リットル水を飲むべきではないか、と考えてしまう方もいらっしゃると思いますが、必要な水分量は性別、身長、体重、外気温、生活習慣によって変化するため、一概には言えません。
水を2リットル飲むと期待できる5つの効果
以下は水を2リットル飲むことによって得られるとされるメリットです。
- 減量につながる
- 集中力が向上する
- 尿路結石の予防になる
- 美肌につながる
- 便秘予防になる
減量につながる
複数の研究で、1日に飲む水の量を増やすことによって摂取カロリーが減るため、減量につながるという結果が出ています。
これは、特に肥満の方に有効です。
水分摂取によってカロリーが多く含まれる飲み物の摂取量が減るうえに、水でお腹が膨れるため、食べる量を抑えやすくなります。
水が物理的に胃に入ることにより、過食や早食いをなくす効果も期待できるでしょう。
集中力が向上する
体内の水分が少なくなる=脱水状態になると、人間の脳の機能が低下するということが、研究によって認められています。
体から体重の2%以上の水分が失われると、1つのタスク(やらなければならないこと)に集中することが難しくなるという研究結果も出ています。
そして、その際に水分補給をすることで集中力が改善したという報告がなされました。
適度な水分摂取は集中力の向上、そして記憶力の向上にも効果的だと考えられています。
参考:National Library of Medicine「Narrative Review of Hydration and Selected Health Outcomes in the General Population」
尿路結石の予防になる
尿路結石(腎結石)は、腎臓の中で石が作られてしまう病気で、排出までに強い痛みを伴うことがあります。その原因はまだ判明していませんが、要因のひとつとして考えられているのが「脱水」です。
水分量が少ないと尿の水分量も減り、塩分や老廃物の濃度が高い尿になります。長期間その状態が続いていると腎臓で塩分や老廃物が固まり出し、石になったうえ、尿路で詰まって痛むという説です。
水分補給によって尿の濃度が薄まるため、尿路結石のリスクが下がります。
美肌につながる
2018年のシステマティックレビューでは、1日の水分補給量を多くすることにより、肌について以下が改善するかもしれないと報告されています。
- 荒れ
- 乾燥
- 弾力や伸張性
注意点は「水を飲めば飲むほど肌が潤う」わけではないということ。しかし、肌の乾燥などに悩みがある方は、水分摂取量を増やしてみると改善できる可能性があります。
参考:National Library of Medicine「Does dietary fluid intake affect skin hydration in healthy humans? A systematic literature review」
便秘予防になる
十分な水分を摂取することにより、血の巡りや発汗、排便などが促進されるため、体内の老廃物の排出がスムーズになります。
現段階で判明しているのは「体内の水分が足りなくなると便秘になる」ということです。そのため、水分をしっかり摂ることが便秘の予防になります。
必要な水分量は人によって異なる:最低必要量の計算方法
水分補給に関する研究でよく使われているのはヨーロッパ(European Food Safety Authority)やアメリカ(Institute of Medicine)が設定している基準です。その基準では、男女別に成人が1日に摂取すべき水分量は以下の通りとされています。
- 男性:2.5~3.7リットル
- 女性:2.0~2.7リットル
そして日本の厚生労働省は、1日に2.5リットルの水分摂取を推奨しています。
つまり、健康な成人男性は1日2リットルでは足りないということです。しかし、実際には食事からもある程度の水分を摂っているため、目安として2リットルとされています。
たとえば体重が重い人や病気の人、暑い日に外で労働をする人などは、それぞれに応じた適切な水分量があるため、それを知ることが大切です。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
1日に口から摂るべき最低限の水分量計算方法
健康な成人の1日に最低限必要な水分量は、以下の簡易計算法で見つけられます。
必要水分量(ml/日)=体重(kg)×年齢別必要水分量(ml/kg/日)
- 22歳~54歳:1日あたり35ml/kg
- 55歳~64歳:1日あたり30ml/kg
- 65歳以上:1日あたり25ml/kg
たとえば、体重65㎏40歳の男性の場合、65(kg)×35(ml)=2275(ml)
体重50㎏25歳の女性の場合、50(kg)×35(ml)=1750(ml)となります。
出典:株式会社meiji「経腸栄養の基礎シリーズ」
水は食事でも摂れている
前述したように、食事でも水分は摂取しています。
上の計算結果には食事から摂取する水分量も含まれているため、1日の食事から摂取できる水分量は約600ml前後であることから、それを引いて必要最低摂取量を求める必要があります。
40歳男性:2275(ml)-600(ml)=1675(ml)
25歳女性:1750(ml)-600(ml)=1150(ml)
かなり減りましたね。
また、体内でも1日に約300mlは水分が生成されているため、さらに-300mlした結果「1日に水を2リットル飲めば十分足りる」と考えられるようになりました。
無理なく2リットルの水を飲む方法
一気に2リットルを飲むことは、誰にとっても困難なことでしょう。また、水の一気飲みは体内の塩分濃度を薄めてしまうため、返って健康を損なう恐れがあります。
以下で、水を飲むタイミングとその際の注意点について、説明します。
水を飲むタイミング
おすすめのタイミングは「起床時」と「就寝前」です。
寝ている間にも人間は水分を失っており(不感蒸泄と呼びます)、大人の場合最低でも1000mlの水分がなくなってしまいます。寝ている間は水分補給ができませんので、基本的には軽い脱水状態になると考えてください。
そのため、寝る前にコップ一杯の水、起きた直後にコップ一杯の水を飲むことはとても大切です。
また、人が「喉が渇いた」と感じたときにはすでに脱水状態にあるため、喉の渇きを覚える前に少量の水を飲むことも推奨されています。
水を飲む際の注意点
水を飲む際には、少量をこまめに飲むようにしましょう。ごくごくと喉を鳴らして飲む必要はありません。
前述したように、一度に大量摂取すると体にとって悪影響を及ぼします。
コップ一杯の水を手元に置き、ちびちびと飲むようにしてくださいね。