仕事や人間関係のストレス、不安、眠れない夜などの悩みには「瞑想」が効果的です。
しかし「瞑想には本当に効果があるの?」「宗教っぽくない?」と半信半疑の方も多いのではないでしょうか。
実は、瞑想は今やアメリカをはじめとする世界中の医療・研究機関で、科学的にその効果が証明されているアプローチのひとつです。
この記事では、瞑想とは何か、そして実際の研究結果に基づいた瞑想の具体的な効果を、わかりやすく解説します。
毎日数分からでも始められる瞑想習慣で、心身を整えていきましょう。
目次
瞑想とは
瞑想は、心を鎮めて無心になること、頭の中を空っぽにして呼吸に集中し「今」を感じることなどとされている、リラックスや自己洞察を進める行動のことを言います。
古代インドから始まり、世界でさまざまな種類の瞑想が生まれ、取り組まれてきました。たとえば、サマタ瞑想やヴィパッサナー瞑想などがあります。
似たようなものに「マインドフルネス」がありますが、瞑想とはその目的が異なります。
瞑想は古くから行われている悟りを開くための修行のひとつで、今に集中することが目的です。一方、マインドフルネスは「今この瞬間」に集中することによって、日常生活でのストレス管理やパフォーマンスの向上を得ることが目的です。
つまり、瞑想は瞑想をするといった行為そのものが目的、マインドフルネスはその後得られる利益を目的としています。
2大瞑想「サマタ瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」については以下の記事で解説しています。
瞑想とマインドフルネスの違いについては以下の記事で解説しています。
瞑想とヨガの関係
ヨガは現代において「ポーズを取り呼吸法を学ぶエクササイズ」と思われることが多いのですが、実はヨガの最終目的は「瞑想状態に入ること=悟りの極地」です。
多くのヨガでは呼吸を大切にしながらポーズを行いますが、あれは体をほぐし、心を落ち着け、瞑想状態に入りやすくするために行います。
つまり、ヨガをする目的は「瞑想」で、そのためにポーズ(アーサナ)と呼吸法があると覚えてください。
ヨガの瞑想法のひとつ「サンカルパ瞑想」については以下の記事で解説しています。
瞑想の効果
瞑想の効果については、古今東西、数多くの研究が行われています。さまざまな効果が語られていますが、その中でも複数の研究結果から効果があると認められたものを紹介しましょう。
- 集中力や注意力の向上
- ストレスや不安の軽減
- 睡眠の質の改善
- 精神疾患の症状改善
- 記憶力の回復や向上
- 免疫力の向上
集中力や注意力の向上
瞑想中は自分の呼吸などに意識を向け、無心を心掛けることで「注意が散漫になるのを防ぐ訓練」をします。そのため、集中力や注意力が鍛えられます。
集中力や注意力を測る基準にあるのが「実行機能」です。実行機能とは、目標のために計画を立ててそれを実行する、自分の行動や思考、気持ちなどを調整する脳の機能のこと。簡単に言うと、頭と心を上手に使う機能となります。
実行機能が高い人は、さまざまな日常生活行動をてきぱきと上手にこなせます。これには集中力や注意力が必要であるため、実行機能が高い人は集中力や注意力があると判断できるのです。
2020年に行われたグラナダ大学のカセダス博士の研究では、瞑想により実行機能が改善・向上したと発表されました。
集中力や注意力が向上することで、以下のメリットが得られます。
- 仕事や勉強で高いパフォーマンスが発揮できる
- 日常生活の行動効率が向上する
- 衝動を抑えられる
参考:Ciencia Cognitiva「Mindfulness Meditation and Executive Control: Discipline for Our Restless ‘Monkey Mind’?」
ストレスや不安の軽減
瞑想によって、脳の扁桃体と呼ばれる部分の活動が抑制されます。扁桃体は感情の処理やストレス反応に関係する部位で、この扁桃体の活動が過剰になると、不安感が増します。
瞑想を継続することで扁桃体の活動が抑えられ、ストレスに強くなり、不安が軽減されてメンタルが安定するようになります。
精神的安定によって得られるのは、以下のメリットです。
- 感情をコントロールできるようになる
- 良い人間関係を構築できる
- 行動力や決断力が向上する
- リラックスしやすくなる
睡眠の質の改善
瞑想で扁桃体の活動を抑制して不安を抑え、呼吸を意識することで自律神経も整うため、睡眠の質が改善・向上します。
2013年に行われた、アメリカ国立衛生研究所のラッシュ博士らによる研究では、瞑想は薬物療法と同等の睡眠の質改善効果があると発表されました。
参考:National Library of Medicine「The effect of mindfulness meditation on sleep quality: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」
精神疾患の症状改善
瞑想は、さまざまな精神疾患の改善に効果があると認められています。特に、うつ病や依存症、パニック障害などで高い効果があるとされます。
これは、瞑想によって幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌量が増えるためです。
記憶力の回復や向上
瞑想によって脳の海馬と呼ばれる部位の活動が活発化することが確認されています。
海馬は記憶の形成や整理に関係する部位で、ここが活発化することで情報の記憶や学習効率が向上します。
記憶力の向上により、学習成果を上げやすくなるでしょう。
免疫力の向上
瞑想を行うことで自律神経が整えられるため、免疫力の向上につながります。
自律神経には「動」の交感神経と「静」の副交感神経の2つがあり、これが切り替わることで心身の健康を保っています。
現代人は忙しく、睡眠時間を削って仕事や趣味をしたりするため、上手にリラックスできなくなっている人が増えています。交感神経が優位な状態が長く続くと、免疫の中心とも言われるリンパ球の働きが抑制され、免疫力が低下してしまうのです。
瞑想によって免疫力を上げることで、病気に対する抵抗力も向上します。
瞑想は美容にもよい影響を与える
不安が少なくなってストレス耐性が上がり、睡眠の質が向上することで体内の新陳代謝も活発化します。
穏やかな気持ちを保てるため表情が柔らかくなるほか、メンタルが安定することによって暴飲暴食がなくなるため、摂取カロリーが過剰になりません。
また、姿勢を正し呼吸に集中することで、酸素を多く取り込めるようになります。その結果、脂肪を分解するリパーゼという酵素が活発に働くようになり、脂肪を溜めにくい体になります。
さらに、何かに「没頭」することは、心を若返らせる要素となります。穏やかかつ生き生きとした表情になり、他人が受ける印象を明るく若々しいものへ変えてくれるのです。
多くのメリットを持つ瞑想を始めよう!
瞑想はさまざまなメリットを人にもたらします。
今に集中し、自分の内面と対話を重ねることによって、集中力が向上し、ストレスに強くなり、睡眠の質や精神疾患の改善効果が期待できるのです。
疲れが抜けきらない、頭痛や肩こりなどにずっと悩まされているという方は、5000年もの歴史があると言われる瞑想に、少しずつでも取り組んでみてはいかがでしょうか。