子どもの教育にとって大切なのは、ただ知識を詰め込むのではなく、自己の能力を最大限に引き出し、自発的に学び成長できる環境を提供することです。
その一つの方法がモンテッソーリ教育です。
モンテッソーリ教育は、子どもの自主性や自発性を重視し、個々の子どもの成長と学びを促進するとともに、その自立を支える教育方法になります。
この記事では、そのモンテッソーリ教育の特徴と、子どもの発育に与える影響について詳しく解説します。
目次
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、イタリアの教育者マリア・モンテッソーリが考案した教育法であり、子どもの自立心や自発性を尊重し、それを引き出す環境作りを重視します。
子ども一人ひとりが自分のペースで学び、自己を形成し成長する力を最大限に活かすことを目指す教育方針です。
マリア・モンテッソーリとは
マリア・モンテッソーリは、イタリアの教育者で、19世紀末から20世紀初頭にかけて、特に発達障害のある子どものための教育方法を開発しました。
子どもの自発性と自立を重視し、その能力を最大限に引き出すことを目指しています。
この考え方は、現在のモンテッソーリ教育にも引き継がれ、全世界の子どもたちの教育に対する考え方に大きく影響しています。
モンテッソーリ教育の基本的な考え方
モンテッソーリ教育の基本的な考え方は、「子どもの自立を尊重する」ことです。
子どもたち一人ひとりが自己を形成し、自立して生活できる力を内在していると考え、それを最大限に引き出す環境を提供します。
教育の場では、自分で靴を脱ぎ履きする、自分で食事をする、といった生活スキルを子どもたち自身に経験させ、自立心を育むような取り組みが行われています。
自己の能力を認識し、それを用いて自分のことを自分で行う能力、つまり自立する力を育むことに繋がります。
モンテッソーリ教育が定義する発育段階
モンテッソーリ教育は、子どもの成長過程を精神的、身体的発達の観点から4つの段階に分けて捉えます。
- 第一期:0歳〜6歳
- 第二期:6歳〜12歳
- 第三期:12歳〜18歳
- 第四期:18歳〜24歳
これらの各段階では、子どもの発達特性に対応した教育方法が提供され、子どもの成長とともにその焦点がシフトしていきます。
詳しく解説します。
第一期:0歳~6歳(保育園〜幼稚園期)
0歳から6歳までの第一期は、「吸収する心の期間」とも呼ばれ、子どもたちは周囲の情報を非常に吸収しやすい状態にあります。
この時期の子どもたちは、具体的な知識を学ぶよりも、日常生活の中で感じることや経験することが重要です。
例えば、食事の作法や片付けなどの日常生活のルーティーン、感覚を用いた学習などがこの段階の特徴です。
基本的な生活スキルや自己表現の基礎を身に付けていく段階だと理解しましょう。
第二期:6歳~12歳(小学生期)
次に、6歳から12歳までの第二期は、「論理的思考を育てる期間」とされます。
物事の原因と結果を理解したり、論理的に考える能力が育つとされている時期です。
例えば、教育内容としては、読み書きや計算など、算数教育や言語教育が重要になってきます。
第三期:12歳~18歳(中・高校生期)
12歳から18歳までの第三期は、「社会性を育てる期間」と呼ばれる時期です。
自我の確立や社会的なルールを理解することが重視されます。
教育の内容は、更に広範で深い学問へと移行し、例えば歴史や科学、社会学などの学びが増えていきます。
第四期:18歳~24歳(大学〜社会人期)
最後に、18歳から24歳までの第四期は、「自己の完成期間」とも呼ばれている時期です。
この時期の若者は、自己の人格を完成させ、自分が社会に何を提供できるか、自己の使命や役割を見つけることが重視されます。
つまり、自己認識と自己実現のステージであり、大学進学や就職活動、キャリア開発などがこの期間に含まれます。
これらの段階ごとの教育は、子どもの成長と発達に合わせて最適化され、それぞれの段階で必要となるスキルや理解を深めることに繋がります。
モンテッソーリ教育の5つの教育分野
モンテッソーリ教育は、子どもの全面的な成長を支えるために、
- 日常生活の練習
- 感覚教育
- 言語教育
- 算数教育
- 文化教育
の5つの分野に焦点を当てて教育を行っています。
これらの分野は、子どもが自立し、社会に適応し、知識とスキルを得る上で重要です。
それぞれ詳しく解説します。
日常生活の練習
日常生活の練習は、子どもが自立し、基本的な生活スキルを身につけるために不可欠な分野です。
例えば、食事の準備、片付け、服の着脱、手洗いなど、日常的なタスクを通じて、子どもは自分の行動に責任を持つことを学びます。
日常生活の練習は、子どもが自立し、自分自身の世話をする能力を育むための基盤です。
感覚教育
感覚教育は、子どもが五感を使って世界を理解する基本的なスキルを伸ばしていくのに必要な分野になります。
例えば、形や色の違いを見分けるゲームや、音や匂いを認識する活動を通じて、感覚的な理解を深めます。
これにより、子どもは物事の特性を理解し、周囲の環境に適応する能力を身につけます。
言語教育
言語教育は、子どもが自己表現とコミュニケーションのスキルを磨くために必要な分野です。
例えば、子どもは、初めてのアルファベットの認識から始まり、徐々に単語を形成し、次に文を作るという段階を経て、言語力を養います。
これにより、子どもは自分の考えや感情を適切に表現し、他人と効果的にコミュニケーションを取る能力を身につけます。
算数教育
算数教育は、子どもが論理的思考と問題解決のスキルを伸ばしていくための分野です。
基本的な数字の認識から始まり、足し算、引き算、掛け算、割り算などの基本的な算数の操作を学び、さらに図形や計測といった概念にも触れます。
具体的な数値を扱う能力だけでなく、より抽象的な概念を理解し、それらを使用して問題を解決する能力を身につけていきます。
文化教育
文化教育は、子どもが自然科学や社会科学を通じて、世界の広い視野を持つために必要な分野です。
地理、歴史、生物、科学など、多くのテーマを通じて、子どもは自分の周りの世界を学びます。
これにより、子どもは社会や自然環境の理解を深め、それぞれの現象や事件に対する自分自身の理解を深めます。
モンテッソーリ教育のメリットとデメリット
モンテッソーリ教育は、多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
モンテッソーリ教育のメリット
モンテッソーリ教育の最大のメリットは、子どもの自立心と自発性を育むことです。
例えば、子どもが自然科学に興味があれば、その興味を追求するための多くの活動や資料が提供されます。
これにより、子どもは深い理解と自主性を培うことができます。
また、モンテッソーリ教育は子どもが自分自身の学習プロセスをコントロールすることを重視するため、自己調整能力と問題解決能力も強化されます。
モンテッソーリ教育のデメリット
一方で、モンテッソーリ教育には一部の親から「体系的な学習が少ない」との指摘もあります。
従来の教育システムが提供するような一貫性と構造性がある程度欠けているかもしれません。
例えば、伝統的な教育では、学生は一定のスケジュールに従って特定の科目を学ぶことが強制されますが、モンテッソーリ教育ではそのような構造は必ずしも提供されません。
さらに、モンテッソーリ教育は専門的な教材や設備を必要とすることが多く、これらのコストは一部の家庭にとっては負担になるかもしれません。
特に、モンテッソーリ教育を受けるための専用の学校や教室に通わせると、その費用は高額になることがあります。
モンテッソーリ教育を自宅で行う方法
モンテッソーリ教育は自宅でも行うことが可能で、ポイントは2つのみです。
- 環境づくり
- 手を出しすぎない
詳しく解説します。
子どもが興味を持つ教具や環境を用意する
子どもが興味を持つような教具や環境を用意しましょう。
例えば、色とりどりの積み木、触感を楽しむための素材、音を出す楽器など、子どもが触りたい、動かしたいと思うものを用意すると良いでしょう。
また、その教具は子どもが自由に使える位置に置くことが大切です。
これにより、子どもの探究心を刺激し、自発的に学びの活動を始めるきっかけを作ります。
モンテッソーリ教育は「手を出しすぎないこと」がルール
次に、モンテッソーリ教育のルールとして、「子どもが自分でできることは、大人が代わりにやらない」という原則を守ることが求められます。
子どもが何かに取り組んでいるとき、うまくいかないからといって大人がすぐに手助けするのではなく、子どもが自分で解決策を見つけ出すことを待つことが大切です。
子どもが自分で考え、行動することを通じて、自立心と自発性を育むことに繋げられます。
まとめ
モンテッソーリ教育は、子どもが自分の能力を最大限に引き出し、自発的に学び成長できる環境を提供します。
教育方法を理解し、自宅で実践することで、自分のペースで興味のあることを深く学ぶ子どもの姿を見ることができるでしょう。
世界中で注目されているこの教育法は、子どもの自発性を育てる力強いツールとなり得ます。