筋肉には「速い筋肉(速筋)」と「遅い筋肉(遅筋)」の2つの種類があります。
速筋と遅筋は人種や個人によってその量が異なるため、自分の筋肉のタイプを知ることはスポーツを行ううえで重要です。
速筋や遅筋に合ったスポーツやトレーニングをすることで、理想のパフォーマンスや体形に近づきやすくなります。
この記事では、速筋と遅筋について解説します。
速筋とは何か、遅筋とは何か、それぞれを鍛えることで得られる結果や方法、自分のタイプの見分け方などについて、みていきましょう。
目次
速筋は収縮力が速い筋肉のこと
速筋はダッシュやジャンプ、その他レスリングやウエイトリフティングなどのパワー系の動きや、俊敏性が必要なときに使用する筋肉です。
特徴は以下のようなものがあります。
- 別名は「白筋」
- アウターマッスルに多い
- エネルギー源は糖分
- 遅筋に比べて体積が大きい
- 短時間に大きな力を発揮する
- 無酸素運動に向いている
- 疲れやすい
- 持続性に欠ける
- 筋肉痛になりやすい
- 年齢とともに少しずつ減少する
筋線維には白い線維と赤い線維がありますが、速く収縮する筋には白い線維が多いため「白筋」と呼ばれています。
これは白身の魚と同じことです。たとえば、普段はじっとしておりいざというときにだけ瞬発的に動くヒラメは、速筋の魚であるため白身です。
速筋線維の内部には、糖質であるグリコーゲンが大量に蓄えられています。
瞬発的な筋収縮を起こす際に酸素なしでグリコーゲンを分解し、収縮するエネルギーに変えています。
酸素なしで筋の収縮を行える運動のことを、無酸素運動と言います。筋トレや砲丸投げ、相撲などが代表的です。
▼以下の記事で筋トレと有酸素運動の違い、効果的な取り組み順について解説しています。
速筋を鍛える3つのメリット
速筋を鍛えることによって、以下のようなメリットがあります。
- 筋肥大し脂肪が目立たなくなる
- 筋肉量が増える
- 基礎代謝が増え痩せやすくなる
筋トレなどの無酸素運動により、筋肉を肥大させられます。
速筋の鍛え方
速筋を鍛えるには、筋肉に大きな負荷をかけ、できるだけ短い時間かつ少ない回数で筋肉を疲れさせるようにしましょう。
10回で疲れ切る重さのダンベルや、バーベルを使った筋トレに取り組むことがおすすめです。
遅筋は収縮力が遅い筋肉のこと
遅筋は酸素をたくさん蓄えているため、エネルギーを豊富に作り出せる、持久力がある筋肉です。
ただし筋肉を収縮する力は弱く、爆発的な力を瞬発的に出すことはできません。
特徴は以下のようなものがあります。
- 別名は「赤筋」
- インナーマッスルに多い
- エネルギー源は酸素や糖と資質
- 速筋に比べて体積が小さい
- 長時間にわたり力を発揮する
- 有酸素運動に向いている
- 筋肉痛になりにくい
- 爆発的な力は出せない
- 年を重ねても衰えにくい
遅筋は酸素を蓄えるミオグロビンをたくさん含むため、赤っぽく見えることから「赤筋」とも呼ばれています。
よく例えられるのが赤身の魚ですね。マグロやカツオなどは常に海中を泳ぎ回るために遅筋が発達しており、赤身となるのです。
遅筋線維には毛細血管とミトコンドリアが豊富に含まれており、血液によって運ばれた酸素と脂肪をミトコンドリアで持たして筋収縮エネルギーに変えています。
酸素を取り入れ、脂肪を燃やしながら筋収縮を引き起こすことによる運動を、有酸素運動と言います。ウォーキングや水泳、ダンスなどが代表的です。
遅筋は速筋と比べて体積が小さく、太くなりにくい筋肉です。
長距離選手の多くは体が引き締まった細い体形ですが、これは体内の筋肉割合で、遅筋の方が多いからという理由があります。
遅筋を鍛える3つのメリット
遅筋を鍛えることによって、以下のようなメリットがあります。
- 体脂肪を燃やしたるみがなくなる
- 姿勢がよくなる
- 内臓の働きがよくなる
収縮が遅い筋肉は体を支えるインナーマッスルに多いため、負荷をかけて鍛えることで姿勢がよくなり、内臓の位置が正しい場所でキープできるようになります。
加齢による影響は少ないのですが、使わないとやはり衰えます。そのため、意識的に鍛えるようにしていきましょう。
遅筋の鍛え方
低めの負荷をかけながら同じ動作を何度も反復するようにしましょう。
たとえば筋トレでは、軽めのダンベルで1セットにつき15〜20回程度、3セット行います。
有酸素運動ではランニングやサイクリング、水泳などを40分以上取り組むようにします。
酸素を取り込んで筋肉を動かす有酸素運動により、遅筋周辺の毛細血管の酸素を供給する力が高まります。その結果、持久力の向上につながるのです。
運動によって鍛えるべき筋肉が異なる
マラソン選手など、長距離を走る持久力が必要な人は遅筋を鍛えると有利です。
ウエイトリフティングや幅跳び選手など瞬発的なパワーが必要な人は、速筋を鍛えるとパフォーマンスが向上します。
サッカーやバスケットボール、ボクシングなどの持久力も瞬発力も必要なスポーツに関しては、ジョギングや筋トレを組み合わせて行うことで、選手は両方の筋肉を鍛えています。
生まれつき「速筋タイプ」と「遅筋タイプ」がいる
体内の筋肉割合で、速筋線維が多い人は短距離走向き、遅筋線維が多い人は長距離走向きです。
小学校のころ、短距離走が得意だったかマラソンが得意だったかで、自分のタイプがわかります。
これは生まれ持ったものであるため、生涯変わることはありません。
実際に、速筋タイプであるにもかかわらず長距離選手として長期間トレーニングを積んだ場合でも、遅筋線維の割合は増えなかったという報告もあります。
また、人種や遺伝も関係します。
たとえば、親がマラソン選手など長距離選手だった場合は子どもも遅筋タイプになりやすいと言われています。
走る競技に強いと言われる黒人は、狩猟民族を先祖に持つ場合、一般人でも筋肉の67%が速筋線維であるという研究結果があります。
つまり、人種的に黒人が短距離走が速いというのは事実なのですね。
ちなみに、一般的な日本人の太ももの速筋・遅筋線維の比率は50:50の半分半分ですが、個人差が大きく、極端に速筋が多かったり遅筋が多かったりする人もいます。
そして、マラソン選手の速筋・遅筋線維の割合は18:82で、短距離選手は63:37と言われています。
しかしながら、筋線維の割合だけではスポーツのパフォーマンスは決まりません。
取り組むトレーニングによって心身にさまざまな影響が発生するため、筋線維の割合に一喜一憂する必要はないと知っておきましょう。
参考:荻窪整骨院「からだステーションコラム№247」
参考:P V Komi, J H Viitasalo, M Havu, A Thorstensson, B Sjödin, J Karlsson「Skeletal muscle fibres and muscle enzyme activities in monozygous and dizygous twins of both sexes」
筋線維組成の推定式とは
スポーツの現場では、簡易的に行える「50m走と12分間走のタイムから筋線維組成を推定する方法」で選手の筋線維組成を推測しています。
自分の速筋、遅筋の割合を知りたいという方は、やってみてください。
(式)大腿部の速筋線維の割合(%)=69.8x−59.8
x=50m走の速度(m/s) / 12分間走の速度(m/s)
参考:J-STAGE 体育学研究「50m走と12分間走の成績による外側広筋の筋線維組成の推定」
速筋と遅筋の違いを理解し筋肉を鍛えていこう
筋トレをすると筋肉がついて体が大きくなる、体重が増えると考える方が多いのですが、鍛える筋肉の種類によっては筋肉肥大や体重増加にはつながりません。
自分が必要とする筋肉は何かについて考え、的確に鍛えることが競技パフォーマンスの向上につながります。
理想の体を作るため、またスポーツのパフォーマンス向上を狙うためにも、筋肉の種類について特徴や鍛え方を知り、自分に合ったトレーニングを行うようにしましょう。