- 糖質と体力の関係
- 単糖類、二糖類、多糖類について
- 糖質摂取の目安量について
運動時に必要な栄養分は何かという問いには「タンパク質」と考える方がたくさんいらっしゃるかもしれません。
タンパク質は体を作る栄養素であるため間違いではありませんが、まず体を動かすにはエネルギーが必要ですよね。
そこでこの記事では、運動時に必要なエネルギー源となる「糖質」について解説します。
糖質が大切とされる理由や炭水化物・糖類との違い、糖質不足によるリスク、運動に必要な糖質量の目安などを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
運動に糖質(炭水化物)が大切な理由
人が生命維持をするのに必要な3大栄養素は「炭水化物」と「タンパク質」、そして「脂質」です。
- 炭水化物(糖質):消化吸収によりエネルギー源となる
- タンパク質:消化吸収により体を作る
- 脂質:消化吸収により体内の構造や機能に関わったりエネルギー源になったりする
炭水化物(糖質)は脂質よりも消化・吸収が早く、体に素早くエネルギーを供給します。
筋肉や肌を作るため、運動にはタンパク質が必要であることは間違いありません。
しかし、いくら立派な体を持っていてもエネルギーが不足していると体は動かせませんよね。
車で考えると、タンパク質は車体、炭水化物(糖質)はガソリンのようなものです。
そのため、主食である炭水化物をしっかりと食べることは基本であり、重要なことなのです。
炭水化物・糖質・糖類の違い
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」の2つに大別できます。
糖質は体内で消化吸収されてエネルギー源となるもので、食物繊維は消化されにくく腸まで届いて腸内環境を整えるものです。
さらに糖質には、単糖類・二糖類・多糖類という分類があり、その内単糖類と二糖類を指して「糖類」と呼びます。
- 単糖類:分子が1つ(例:ブドウ糖、果糖)
- 二糖類:分子が2つ(例:砂糖、乳糖)
- 多糖類:分子が3つ以上(例:グリコーゲン、デンプン)
糖質を含む食べ物と量の例
糖質は前述の通り、単糖類・二糖類・多糖類のことで、日常で食べているあらゆる食品に含まれています。
- 単糖類:穀物、野菜、果物、はちみつなど
- 二糖類:佐藤、水あめ、牛乳など
- 多糖類:イモ類、ご飯、小麦、豆類など
- おにぎり1個(ご飯75g)…約30g
- ご飯1杯(150g)…約55g
- 食パン1枚(6枚切り)…約25g
- うどん1玉…約55g
- ラーメン(麺110g)1玉…約65g
- バナナ1本…約10g
- カステラ1切れ…約25g
- スポーツドリンク1本(500CC)…約24g
参考:「糖質量まとめ」
糖質は適正摂取が必要:糖質不足で起こる4つのリスク
糖質ダイエットなどに取り組む方はたくさんいらっしゃいますが、日常生活を送るうえで誰でも必ず糖質を使っているため、行き過ぎた糖質制限は危険です。
完全に糖質を断つといったことはしないようにしましょう。
以下は、糖質が不足することによる4つのリスクです。
- スタミナ切れを起こす
- 疲労回復が遅れる
- 筋力が低下する
- 運動時に低血糖を起こす
特に日常的に運動をする方やアスリートの場合は、一般の人よりも多く、十分な糖質を摂取する必要があります。
スタミナ切れを起こす
食事で糖質を摂取しなければ、人は簡単にエネルギーが足りなくなってしまいます。
特に長時間の運動をする場合は枯渇しやすくなるため、積極的に糖質を摂取しなければなりません。
人間が運動時にエネルギー源とするのは、糖質と脂質です。
脂質は体内に何キロもの体脂肪として蓄えられていますが、糖質は体内で蓄えられている量が少なく、一般的な成人で300gほどと言われています。
オリンピックに出るようなアスリートの場合は一般人より貯蔵量は多く、グリコーゲン(糖質が形を変えたもので肝臓や筋肉などに蓄えられている)は500g以上と言われていますが、エネルギーに換算すると半日程度です。
糖質が枯渇するとスタミナ切れを起こし、トレーニングの強度や集中力の低下を招きます。
参考:アストリション「【管理栄養士監修】アスリートに必要な糖質(炭水化物)の摂取量」
疲労回復が遅れる
運動中にグリコーゲン(糖質)が枯渇した場合、運動後に食事で十分に糖質を補給しなければなりません。
運動後のエネルギー摂取が十分でないと、疲労回復が遅れてしまいます。
また、疲労から回復しないままでさらに運動を続けると、オーバートレーニングや免疫力の低下による体調不良などにもつながります。
筋力が低下する
食べ物からエネルギーを摂取できない場合、体は筋肉や体脂肪を分解してブドウ糖を作り出し、エネルギー源にしたり血糖値を維持したりするのに使います。
不要な体脂肪の分解だけであればダイエットになりますが、問題は筋肉も分解されてしまうことです。筋肉が分解されると筋肉量が減り、筋力も低下します。
運動時に低血糖を起こす
糖質がなくなりつつある状態でも運動を続けると、低血糖を起こす場合があります。
低血糖とは血液中の糖分濃度が低くなる状態のことです。空腹感、冷や汗、ふるえ、動悸、しびれなどが発生し、重い場合は意識障害を起こすこともあります。
運動前後に必要な糖質摂取の目安量
運動量や種目によって、使われる筋肉の特性が異なるため、必要な量も異なります。
ただし目安としては、筋力・瞬発系の無酸素運動の場合で6g×体重、持久系の有酸素運動の場合で7〜10g×体重となっています。
ちなみに、IOCによる糖質摂取ガイドラインは以下のようになっていますので、参考にしてください。
- 低強度のトレーニング 技術練習など 3~5g/kg体重
- 中強度のトレーニング 中強度の運動 5~7g/kg体重
- 高強度のトレーニング 1~3時間程度の持久性運動 6~10g/kg体重
- かなり高強度のトレーニング 4~5時間の高強度運動 8~12g/kg体重
参考:「Carbohydrates for training and competition」 より一部抜粋
たとえば、野球部員で体重が60㎏の人であれば、1日に数時間の高強度トレーニングに行っていると考えられるため、
60(㎏)×6~10(g)=360~600
となり、1日に360〜600gの糖質を摂取する必要があるということです。
また、そのうち半分程度が主食である米やパン、麺類からの摂取が望ましいとされています。
ご飯をお茶碗に1杯(約150g)だと1日に10杯ほどの量になるため、3食だけでなく間食も活用して糖質を摂取するようにしましょう。
持久系競技の試合時間に合わせた捕食の例
マラソンなど持久競技の場合は、以下の例のように段階を経てしっかり糖質摂取することが大切です。
①試合の3~4時間前:糖質中心で脂質が少な目の食事を摂る(焼き魚定食など)
②試合の2時間前:糖質中心で脂質が少ない軽食を摂る(おにぎりやバナナ、菓子パンなど)
③試合の1時間~30分前:吸収が早いものを摂る(バナナや栄養ドリンクなど)
④試合直前:吸収が早い糖を摂取する(スポーツドリンクや飴など)
⑤試合中:水分と糖質の補給(水、おにぎり、バナナなど)
⑥試合後:なるべく早くちゃんとした食事か軽食を摂る(丼物やジュース、サンドイッチなど)
参考:alic農畜産業振興機構「スポーツと糖質~アスリートの基本の食事~」
糖質は運動の際の大切なエネルギー源
筋トレやスポーツに一生懸命取り組んでいても、なかなか効果がでないという場合は「エネルギー不足」を疑ってみてください。
エネルギー不足が続くと心身に大きな悪影響を与えます。体をしぼるためと糖質制限をしている方は、自分に必要な糖質量を把握し、その分はしっかりと摂ることを心がけるようにしましょう。