持久力が必要とされる運動やスポーツは、エネルギー補充が十分でないと途中で急に体が重くなり、エネルギー切れを起こしてしまい最後まで動き続けることが難しくなってしまいます。
運動やスポーツをおこなう際には、栄養バランスの良い食事よりも競技での実力を最大限発揮できるための栄養補給が大切。そこで多くのアスリートが実践している方法が「カーボローディング」です。
カーボローディングとは、エネルギーを体内に多く蓄える食事方法を指し、多くのアスリートの方が取り入れた食事方法でしたが、一般の方でもその食事方法が取りいられ始め、エネルギーが必要な「ここぞ!」というときに実践している方も多いようです。
この記事では、カーボローディングとは何か、そしてカーボローディングの方法と注意点について紹介します。
目次
カーボローディングは食事法のひとつ! 体にエネルギーを充満させよう
カーボローディングは体にエネルギーを充満させる食事法です。
カーボローディングの方法は、まず最初に運動や食事をコントロールし、エネルギー源である体内のグリコーゲン(糖質)の量を一度減らします。
グリコーゲンの量は何時間で減らすことができるのか
グリコーゲンは、炭水化物が分解・変換されたブドウ糖などの糖質を指し、主に肝臓に貯蔵されます。
人体は接種された糖質を利用して血糖値を上げる働きをしますが、これは肝臓がグリコーゲンを分解しグルコースを供給する働きをします。
この働きをするため、肝臓に貯蔵されるグリコーゲンは半日から1日までとされています。
またエネルギー源として利用できるグリコーゲンは6〜8時間までが限界とされておりますので、競技開始の5時間前などに多めに炭水化物を摂取すると良いでしょう。
カーボローディングの方法
体内のグリコーゲンを減らした状態から、今度は炭水化物(カーボハイドレイト)を短期間で一気にたくさん摂取し、糖質のリバウンド効果を発生させます。
炭水化物の摂取量は体重1kgに対して10gの炭水化物が推奨されます。体重が60kgの方では約600gの炭水化物を目安に摂取すれば良いことになります。
炭水化物が600gは短時間で摂取する必要はなく、競技や試合の2日前から摂取する量を増やしていきましょう。
その結果、一時的に体内のグリコーゲンが大きく増えるため、通常よりもエネルギーが満ちた状態で運動やスポーツに取り組めるようになるわけです。
長時間体を常に動かすマラソンやトライアスロンのようなスポーツでは、グリコーゲンの消費量が多いため、普段の食生活では競技終盤にエネルギーが枯渇してパフォーマンスが低下します。
そのため、試合前にカーボローディングを行い、少しでも多くのエネルギーを貯蔵して競技に臨む方も多いようです。
カーボローディングが必要なスポーツ・運動とは?
一般的にカーボローディングが有効とされるスポーツや運動は、以下のようなものが代表的です。
- マラソン
- 自転車ロードレース
- トライアスロン
- サッカー
- バスケットボール
- 水泳
など
特にマラソンやトライアスロンなど、運動の持続時間が1.5時間以上の持久性競技において真価を発揮します。
体内に貯蔵できるグリコーゲン量には限度がある
そんな面倒くさいことをしなくても、普段から体内にエネルギーを貯めておけばいいのではと考える方もいるでしょう。
しかし、エネルギーは際限なく蓄えられるわけではありません。
実際に蓄えられるグリコーゲンには限度があり、筋肉内に貯蔵できるグリコーゲンは通常成人男性で100〜400g、肝臓には90〜150gと言われています。
人間が体に蓄えられるエネルギーの代表には脂質と糖質があります。
脂質、つまり脂肪はたくさん貯蔵できますが、運動時にエネルギーとして使われるまでに時間がかかります。
それに対し、グリコーゲン(糖質)は分解が簡単にできるため速やかに吸収される性質を持ち、運動時にすぐに使えるエネルギー源です。
ただし、貯蔵できる量が少ないというデメリットがあります。
何もしていない状態に比べ、カーボローディングを行ったときは筋肉と肝臓に蓄えられるグリコーゲン量が2〜3倍に増加します。つまり、運動時にエネルギーが枯渇しにくくなるのです。
カーボローディングをすると太る?
一気に炭水化物を摂るため、カーボローディングをすると体重が増えます。体重が増えることは、競技にとってマイナスの効果もありますが、実際にはさほど気にすることではありません。なぜならこの体重増加は、摂取した糖質がグリコーゲンとして貯蔵される際に、グリコーゲンと一緒に水分も蓄えられることによるからです。
グリコーゲン1gには約3gの水分が結合するため、たとえば300gのグリコーゲンを普段よりも増やしたとすると、約900gの水分も一緒に増えることになります。つまり1.2㎏の体重増加ですね。
しかし、体重増加の主な原因は体脂肪ではなく水分が増えることであるため排出しやすく、体重増加のデメリットよりもエネルギーを貯められるメリットの方が大きいとされています。
【実践!】カーボローディングのやり方
実際の食事の仕方を、期日に合わせて紹介します。
- 本番の1週間前から3日前まで
- 本番の3日前から前日
- 本番当日
本番の1週間前から3日前まで
本番の3日前までは低糖質食の時期です。食事から糖質をできるだけ除き、高たんぱく・高脂質の食事にしましょう。
これは、できるだけ体内のグリコーゲンを少なくすることが目的です。
かつてはこのタイミングで極端な食事制限をする人がたくさんいましたが、心身両方にストレスが大きく失敗する例が多かったため、現在は極端な食事制限は推奨されていません。
何を食べるかは難しく考えず、「主菜を食べない」程度でもOKです。副菜の肉や魚、卵などを中心に摂取しましょう。味が濃いものが多いため、ハンバーグやステーキなどの洋食にすると満足感を得やすくなります。また、間食にもタンパク質が摂れる食材、たとえばナッツやチーズ、納豆などを選ぶようにしてください。
本番の3日前から前日
本番の3日前から高糖質食に切り替えます。糖質は1日の食事の70%程度が摂取の目安です。
ご飯、麺、パンなどを中心に、糖質が多い根野菜もたくさん取るようにしましょう。甘いものを食べる際には、洋菓子よりも食物繊維が含まれる和菓子をおすすめします。
この期間は主食をたくさん食べてください。副菜は、から揚げやピザといったような油っぽいものは少なめにし、和食中心にしてご飯をたくさん食べられるようにすると良いでしょう。
とは言え、主食だけで大量のエネルギーを得るには3食だけでは難しいので、フルーツや和菓子も積極的に摂取してください。白玉団子やお汁粉などがおすすめです。
試合や競技の当日
本番当日は、糖質が多い食事が基本で、脂質の多いものは避けましょう。運動本番の2時間前までには食事を済ませておくことが大切です。
食べるものは、糖質の中でも糖質の吸収が早いGI値(グリセミック・インデックス値の略)が高いものがおすすめ。たとえばサンドイッチやホットケーキ、コーンフレークなどです。副菜はポテトサラダやコーンサラダ、お味噌汁、ゆで卵などを合わせてみましょう。間食をするならバナナや果汁100%のジュース、スポーツドリンクなどが良いですね。
カーボローディングに取り組む際の注意点
カーボローディングに取り組む際には、運動量も変化させること、そしてビタミンやミネラルは普段同様にしっかり摂ることを覚えておきましょう。
運動すると糖質が消費されるため、あまり激しく体を動かすと体内の糖質が枯渇してしまいます。当日に向けて運動量も減らすようにしてください。また、運動によってビタミンやミネラルも減ります。毎日の食事でこれらの栄養素をしっかり摂ることを心がけましょう。
カーボローディングはエネルギーのため込み作戦!試合当日に向けて貯蔵可能量を増やそう
持久力が必要な運動をしているとき、十分なエネルギーを体に溜めておかないと、終盤に失速してしまいます。カーボローディングはエネルギーが必要な当日に向け、普段よりエネルギーを貯め込むための食事法です。通常に比べ、力が減少しにくくなることを感じられるでしょう。
メリットの多い方法ではありますが、一気に食事量を増やすことは内臓にとって負担があります。そのため日常的に利用するのではなく、ここぞというときに取り組んでエネルギーを充満させてくださいね。
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