AIやロボットなどがさまざまなシーンで活躍する現代においては、子どもが五感のすべてを使って体験する機会が減少しています。
たとえばタブレットで焚火の動画を観ると、炎がどう動くかは自宅で安全に観察できます。しかしその場にいないため、薪が燃えるにおいや火がはぜる音、触ろうとすると熱いことなどは、経験できません。
自然の中にいてできる体験は、子どもにとってとても大切な経験です。この記事では、子どもによいとされる「原体験」について紹介します。
原体験とは何か、子どもにもたらす影響や何歳までに経験させるとよいと言われているか、そして原体験ができる場所などについて、順番にみていきましょう。
目次
原体験とは? 子どもの人格形成に大きな影響を及ぼす体験
原体験とは、におう(嗅覚)、さわる(触覚)、あじわう(味覚)など、五感のうちの三感を意識的に体験させることを言います。
具体的には火・石・土・水・木・草・動物の7つの自然物を五感で直接体験することです。
これにプラスして恐怖感、空腹感、感動などの極限状態の体験をゼロ体験と呼び、7つの自然物にゼロ体験を加えたものを原体験と呼びます。
たとえば、よい例の代表的なものがキャンプです。テントを自分たちで張り、水を汲んで火を沸かし、料理をして、侵入してくる虫や動物を避けながら、夜は星空を見上げるといった体験ができます。
自然物でものを作ったり遊んだり集めたりして体と頭を使い、自然界での打ち勝てない恐怖や不安に直面するといった体験を原体験と呼び、その体験が子どもたちの生きる力を育むのです。
原体験が子どもにもたらす影響
原体験を幼少時にすることで、地頭がよくなります。
それは、すべての学力の基礎・土台となる探求心や感性が、原体験をすることで自然に高められるからです。
なぜ? どうすればいい? こっちは失敗だったけれどあっちはうまく行った! といった実際の感覚、目で確認した対象に手で触れ、肌で感じ、舌で味わうことによって、子どもたちの知恵が育まれ、危険回避やアイディアを生み出すきっかけになっていくのですね。
原体験はなるべく小学生高学年くらいまでに
原体験は子どものときに経験することが大切だと言われています。
一般的には、8歳から10歳くらいまでの間に経験すると良いとされていますが、これは10歳くらいで自分の世界観や価値観、興味、好き嫌いなどが固まるとされるためです。
ただしいくつになっても自然での体験が脳へ大きな刺激を当てることには違いないので、思春期に入る中学生くらいの時期でも、良い影響を与えると考えられています。
原体験ができる場所
原体験ができる場所は以下のようなところです。
基本的には、自然がある場所ならば何かしらの経験は積めるでしょう。
- キャンプ場
- 公園
- 海や川
- 学校
- 寺や神社
キャンプ場
キャンプ場にも種類がありますが、最も多くの原体験を積める場所はすべて自分たちでやるタイプのキャンプ場です。
テントを張ることから始め、水汲みや火付けなどを経験すると、普段自分たちがいかに便利な機械に囲まれているかを痛感できます。
1晩でもさまざまな経験が積めるため、家族でのキャンプがおすすめです。
公園
小さな公園であっても木や砂はあります。
木や砂に触れ、投げ、飛ばし、口に入ったり痛い思いをしたりすることで、原体験は可能です。
海や川
大自然の中にいると人間はちっぽけな生き物で、世界にはいろいろな音や色、温度、形などがあると学べます。
水の中で遊ぶ楽しさや水中の負荷による疲れ、足が底につかない恐怖や流される不安などを経験できる場所です。
学校
学校でも複数の原体験は可能です。たとえば夏場のプールは、水の冷たさや水中では呼吸ができないこと、水を飲んでしまったときの苦しさなどが学べます。
また、校庭には木や砂があり、花や野菜の栽培、うさぎやニワトリの飼育体験もできるため、多くのことを学べる場所と言えるでしょう。
神社
お寺や神社は、自然に囲まれています。ご神木などもあり、自然に対して敬虔な気持ちを持つ場にもなるでしょう。
また、お寺や神社など、人気が少なく自然が多いところにある暗がりや静けさは、子どもがゼロ体験(恐怖や不安、美しい、寂しいなど)を味わうには絶好の場所です。
親は見守る姿勢を忘れずに
原体験はともかくとして、ゼロ体験のように子どもに不安や恐怖を体験させることは、親としては勇気が必要なこともあるでしょう。
しかし、ゼロ体験は結果的に、より大きな危険や事故、不安を防げるようにするのが目的で行います。そのため危険の大きさは親が判断するようにし、上手に危険を体験させるようにしてください。
たとえば、子どもに森林の中を一人で歩かせて、自然の匂いや暗さ、湿度、静けさなどを感じさせてみましょう。もしくは、ハイキング中に目的地に着くまでは食事を我慢させて、「お腹が空いているのに食べるものがない」という状況を作り、空腹感や喉の渇きを経験させてみてください。
火を作り出すために、子どもにマッチを擦らせて火をつけさせましょう。マッチは持ち続けていたら火傷をしますが、火傷も経験がなければ痛みはわかりません。
いずれも親がしっかり子どもの様子を見ながら行うことが肝心ですが、子どもがこれからの人生で命にかかわる無茶をしないよう、恐怖や不安を体験させることがおすすめです。
また、何を感じ取り何を学ぶかは子どもの個性によると知っておきましょう。
同じ焚火の体験をしても、ものが燃えるということに興味を持つ子もいれば、火の熱さに興味を持つ子もいます。原体験は親が「これを学ばせよう」と考えて促すものではなく、あくまでも主人公は子どもです。親は子どもの興味関心を観察して、それがより広がるようにサポートするようにしましょう。
原体験は子どもの五感を育てる。 幼少期の脳への刺激は大きく影響
子どもがにおう、さわる、あじわうといった行動を自然の中で行う「原体験」により、子どもの五感が刺激され、地頭がよくなると言われています。
人の世界観や好み、興味などが固まるのは10歳くらいとされているため、できれば幼少時に多くの原体験を積みたいところです。
ぜひ休みの日には、家族で海や川、湖、山、森林などにキャンプにでかけ、家族で大自然を楽しんでみましょう。
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