年齢を重ねると、誰でも転びやすくなったり疲れやすくなったりします。これは加齢によるもので自然なことですが、年を重ねたので動けなくなるのは仕方がないと諦めてしまうと、後々自分が大変なことになってしまいます。
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間=健康寿命」を上げるためには、運動することが大切です。筋肉はいくつになっても鍛えられますし、鍛えることによるメリットはたくさんあります。
今回は高齢者に特に鍛えてほしい「太ももの筋肉」について、そして高齢になると筋肉量が減少する理由、さらに取り組んでいただきたいトレーニングについて紹介します。
目次
高齢者は運動の継続が大切! 特に鍛えたい部位は太ももの筋肉
厚生労働省の発表によると、令和元年(2019年)における日本人の平均寿命は男性が81.4歳、女性が87.45歳です。しかし、日常生活が制限されずに生活できる期間を指す「健康寿命」になると、男性72.68歳、女性75.38歳まで下がります。この間は、介護状態で生きているという方が多いということですね。
人が持つ筋肉の中で最も大きく、毎日の生活で必ず使う部位は「太もも」です。太ももには前の筋肉と後ろの筋肉があり、人体の土台に相当します。
前太ももの正式名称は大腿四頭筋で、大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋の4つで構成されています。最大の大きさを持つ大腿四頭筋が衰えると全体の筋肉量もどんどん減少し、日常生活に大きな影響を与えます。
太ももの筋肉は膝関節を使う動作に関係しているため、影響を受けるのは次のような動作です。
- しゃがむ
- 立ち上がる
- 椅子に座る
- 自転車を漕ぐ
太ももが衰えると「座ると立ち上がるのに時間がかかる」や「膝に手をつかなければ階段を登れない」といったことが起こります。
立ち上がりづらいことで面倒になり座ったまま動かなくなって、ますます筋力が衰えるという悪循環にはまる高齢者が多いのですね。太ももの筋肉(大腿四頭筋)は大きいために衰えるスピードも速いので、日常的に刺激してしっかり動かすことが大切です。
高齢者で最も多いケガは転倒による骨折
それまで普通に暮らしていた方が介護状態になる最多の原因は、転倒による骨折です。特に下半身の骨を折ってしまうと、治療の間安静にしていることで筋肉が衰え、寝たきりにつながります。
高齢者の骨折で多いのは、次の4つです。
- 大腿骨近位部骨折
太ももの付け根の骨折。寝たきりになる人が多く、社会問題にもなっている。 - 脊椎圧迫骨折
背骨の骨折。尻もちをつくことで起こるケースが多い。 - 上腕骨近位部骨折
腕の付け根の骨折。転倒時に肩を打ったり、肘や手を地面についたりしたときなどに多い。 - 橈骨遠位端骨折
手首の骨折。転倒時に地面に手をついたときに起こる。
高齢者の転倒は、筋肉量の減少と骨粗しょう症による骨の脆弱化が原因です。そのため転倒予防には、骨粗しょう症のケアと運動による筋肉量の維持や増加が大切。筋肉量や筋力の増減は自力である程度まではコントロールできるため、積極的に取り組んでいく必要があります。
では、高齢者の筋肉量と筋力の低下がなぜ起こるのかについて、原因となる「サルコペニア」と「生活不活発病」の2つを紹介しましょう。
高齢者になると筋肉量が減少する原因:①サルコペニア
サルコペニアは老化によって筋肉量が少なくなる現象です。背中や太もも、お腹といった、体が重力に負けないように支える筋肉部位に現れることが多く、加齢に伴い徐々に立ち上がったり歩いたりが難しくなります。
上は太ももの筋肉のCT画像で、灰色部分が筋肉、グレーの部分が脂肪です。サルコペニアになった方の太ももには筋肉が少なく、脂肪が多いことがわかりますよね。
つまづくことが多くなったり立ち上がり時に手をつくことが増えたりしたら、それは筋肉量や筋力の低下のサインです。筋力を向上させる運動に取り組むことで、サルコペニアの症状を抑えましょう。
高齢者になると筋肉量が減少する原因:②生活不活発病
生活不活発病は、動かない状態からスタートする悪循環により「動けなく」なってしまう病気です。
- 痛みがあったり面倒に感じたりすることで動かない状態を維持する。
- 筋肉が衰え、動くとしんどさや痛みを感じるようになる。
- ますます動かなくなる。
- やがて動けなくなる。
- 生活全体で不活発になる。
これは運動不足や季節の影響による精神的不調だけでなく、定年退職で社会参加が減ったことなども発症原因になります。日ごろから体操や散歩など簡単にできることを続け、運動頻度を増やすことが大切です。
高齢者が太ももの筋肉を鍛えることで得られるメリット3つ
高齢者にまず鍛えてほしいのは、人体の中で最大サイズの筋肉である太ももです。前述した通り、大きい筋肉のために日常生活に与える影響も大きいからですね。
太ももを鍛えるメリットは次の3つがあります。
- 転倒防止:骨折予防
- 血流促進:冷えの改善、内臓機能促進、心臓病予防
- 脳の活性化:認知症予防
大きい筋肉を鍛えると、しっかり体を支えられるようになるために転倒リスクが減少。また、血流が促進され全身の血のめぐりがよくなることで冷えを防止するほか、各臓器や脳にも十分な血と酸素が行き渡って活動が活発化するため、心臓病や認知症の予防にもつながります。
高齢者におすすめ! 取り組みたい太ももの筋力アップトレーニング
高齢者にも取り組みやすい簡単かつ低負荷なトレーニングを紹介します。自宅で取り組めるうえ、動きが簡単な以下2つのトレーニングがおすすめです。
- 脚上げ運動
- 足踏み運動
【関連記事】足の引き締めや筋肉量アップのための道具不要なトレーニングについて
https://neighbor.fit/blog/blog-642/
脚上げ運動
椅子に座って取り組む太もものトレーニングです。太ももの大腿四頭筋と同様に、お腹の深層部にある腸腰筋(ちょうようきん)も鍛えられます。椅子からの立ち上がりや階段の上り下りを楽にするため、取り組んでみましょう。
【脚上げ運動のやり方】
- 背もたれに寄りかからないように背筋を伸ばして椅子に座る。
- 両手は両足の横で座面をつかむ。
- 右足の膝を少し伸ばす。
- 2の状態を維持したまま、膝の角度を変えずにゆっくりと右足を上げる。
- 右太ももにつらさを感じるまで上げたら、かかとが地面につかない程度までゆっくりと下ろす。
- 10回行う。
- 左右を交代し、左も同様に行う。
【注意点】
- 足の上げ下げをしている最中に呼吸を止めないようにすること。
- 左右10回ずつを1日に3回行います。
足踏み運動
こちらも椅子に座ったままできる運動です。内容は足踏みをするだけと簡単なうえ、お腹の深層部にある腸腰筋を刺激でき、さらに有酸素運動としても効果が期待できます。ただし筋肉への負担は少ないので、1日に複数回取り組みましょう。
【足踏み運動のやり方】
- 背筋を伸ばし、肘置きのない椅子の前の方に浅く腰掛ける。
- 両腕は歩くときと同じようにしっかりと振りながら、その場で足踏みをする。
- 3分間続ける。
【注意点】
- 体の芯をまっすぐに保つ意識を持つことと
- 腕は体の横から後ろへと振ること
高齢者は太ももの筋肉を鍛えるのがおすすめ! 簡単なトレーニングの継続を
老化による筋肉量や筋力の減少は、自然現象のひとつです。特に日常生活で活発な動きが減ると、それに応じて筋肉はだんだんと衰えてきます。
ただし筋肉はいくつになっても鍛えられるため、老化を止めることはできずとも遅くすることは可能です。筋肉量と筋力が十分だと、体が温かいうえに軽く感じます。その結果、内臓機能の活発化や転倒防止が期待できるため、病気やケガになるリスクも減らせます。
おすすめしたいのは下半身を鍛えること、特に太もものトレーニングをすることです。こちらで紹介したような簡単な足の上げ下げ運動などを長く続けることで、太ももの筋肉量や筋力の減少を抑えられます。
大量の汗をかくような激しい筋トレができなくても問題ありません。普段から散歩や階段の上り下り、ラジオ体操をするなどして、下半身をよく動かしましょう。
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