子どもを育てるのは本当に大変なことが多く、親は常に何らかの心配を抱えることになります。
しかしそこで過保護にしすぎてしまうと、返って子どものためにはなりません。
子どもに愛情があるがゆえに、子どもに過干渉したり過管理してしまう親のことを「ヘリコプターペアレント」と呼びます。
この記事では、ヘリコプターペアレントとは何か、彼らがどのような行動をするかや、ヘリコプターペアレントから影響を受けた子どもの特徴などについて解説します。
目次
ヘリコプターペアレントはアメリカ発祥の言葉
「ヘリコプターペアレント」はアメリカで生まれた言葉で、子どものことや子どもの経験、問題に対し、過剰なまでに注意を払う親を指します。
ヘリコプターのように子どもの頭上をホバリングし、子どもの生活を絶えず監視している様子から名付けられました。1969年のベストセラー本から登場し、1980年代の後半には一般的に使用されるようになった言葉です。
ヨーロッパで言われる「カーリングペアレント」とほぼ同じ意味を持ちますが、カーリングペアレントは幼少期からの過剰な保護をするのに対し、ヘリコプターペアレントは高校生や大学生くらいの子に対する親の過剰管理に使われていました。
しかし、現在は子どもがどの年齢であっても用いられています。
ヘリコプターペアレントがすること
ヘリコプターペアレントは子どもが何かに挑戦する度に、口や手を出してサポートします。
具体的には、子どもができない宿題を親がし、子ども同士の揉め事は親が介入して解決するのです。
大学生や社会人の子どもが寝坊しないように毎朝一人暮らしのアパートに電話をしたり、子どもの成績について学校の教師に電話をかけ不平を訴えたりもします。
問題は、親の保護が子の年齢に合っていないことです。
たとえば幼稚園児の子の着替えを親が手伝うことは自然な行動ですが、身体的に問題のない大学生の子どもの着替えを毎回親がサポートするのは、明らかにやりすぎです。
その他の〇〇ペアレント:それぞれの特徴
〇〇ペアレントと呼ばれる問題を持つ親を指す言葉は、さまざまな国で生まれています。代表的なものを以下に紹介しましょう。
【モンスターペアレント(日本)】
子どもを取り巻く教育関係者に、非常識で自己中心的な要求をつきつける攻撃的な親のことです。我が子が優位になるよう、周囲の大人に非常識な干渉をします。
【カーリングペアレント(デンマーク)】
子どもが痛い思いや悲しい思いをしないよう、あらかじめ困難を排除してしまう親のことです。幼少期から子どもを過保護に育て、子どもの人生から障害を排除しようとします。
【トキシックペアレント(イギリス)】
日本でいう「毒親」のことです。子どもの人生を支配し、自分の欲求を満たすために子どもを利用する親を指します。暴言や暴力など、虐待も多くあります。
ヘリコプターペアレントの影響を受けた子どもの特徴
ヘリコプターペアレントによって影響を受けた子どもは、どのように育つでしょうか。子どもが大人に近づくにつれ、以下のような特徴が多く見受けられます。
- 問題が起こったり挫折したときに対処できない
- 自己肯定感が低く自分を好きではない
- 挑戦しようとしない
- 自己管理が苦手
- 飽きっぽい
問題が起こったり挫折したときに対処できない
親が何でも手を出してサポートしてきたため、問題が起こったときや失敗したときにひとりで対応できません。
その結果、問題を放置してしまったり挫折を受け入れられず心を病んだりしてしまいます。
たとえば忘れ物ひとつをとっても、今までに忘れ物の経験がなければ「先生に相談する」や「友達に貸してとお願いする」または「休み時間に家に取りに帰る」などの選択肢が思い浮かびません。
周囲を親の代わりにして依存してしまい、周囲から人がいなくなることもあります。
自己肯定感が低く自分を好きではない
ヘリコプターペアレントは問題を先回りして解決しようとするため、結果的に子どもの行動を制限しがちです。
危ないからダメと一人で外へ出かけられなかったり、失敗する可能性が高いから手を出さないように言われたりします。
自分の意欲や考えを否定されることが多くなるため自己肯定感が低く、自分を好きになれません。
行動を制限して守られるということは、その度に否定の言葉を聞く機会が増えるということです。
挑戦しようとしない
前述の通り、ヘリコプターペアレントは何かと子どもの意欲や考えを否定して危険や失敗から守ろうとします。
何かを思いつく度に否定された子どもはネガティブ思考になり、自己主張が苦手になります。常に親の顔色をうかがい、何かに興味を持っても挑戦しようとしません。
自己管理が苦手
何でも親がやってきたため、子どもは自己管理が苦手になりがちです。
人から声をかけられるまで、朝起きられない・食事を自分で作らない・お風呂に入らないといったことから、物忘れが多い、人から何かをしてもらってもお礼などの挨拶ができない、などです。
その結果、思春期には「やってもらうことが愛情」と思い込み、自分で何でもする他の子どもに対して優越感を持つケースもあります。
しかし、大人になると周囲から叱られたり人が離れたりするため、心を病みやすくなります。
飽きっぽい
元々自分の意思で何かを始めたり継続したりしているわけではないため、興味が薄れやすく飽きっぽくなります。
踏ん張りが効かず、物事は簡単に進むものととらえがちです。
ヘリコプターペアレントに必要なことは「忍耐」
ヘリコプターペアレントは、そもそも子どもに対して強い愛情があるが故に発生します。いわゆる毒親とはそこが大きく異なります。
子どもが何不自由なく自由にのびのびと育ってほしいという愛情ゆえに、監視し、危険から遠ざけ、子どもの人生を尊重しなくなってしまうのです。
しかし、子どもは親の所有物ではありません。子どもにも人格があり、自分の人生を自力で切り開いていく責任があります。
昔から日本には「可愛い子には旅をさせよ」という言葉がありますが、小さいころから失敗を繰り返すことで、強く芯があって困難にも打ち勝てるような人間を目指すのです。
そのため、親に必要なのは「忍耐力」です。先回りして手だしをするのではなく、親はぐっと我慢して手を出さないようにする必要があります。
子どもの幸せを考えるのであれば、子どもが努力して失敗を重ねながらも最終的には達成したという過程が必要です。
失敗しないようにサポートするのが愛情ではなく、失敗したときに寄り添うのが愛情と考えるようにしましょう。
もしかして自分は過保護かもしれないと感じることがある場合は、まず子どもの意見を聞くことからスタートしましょう。
やりたいことや興味があることは何かを聞き、一歩を踏み出せるように背中を押してあげてください。
ヘリコプターペアレントは子どものためにならない過保護な親
ヘリコプターペアレントとは、子どもへの愛情から過保護・過干渉になってしまう親を指します。そして「問題親」の問題は、その時点では子どもも親も、その異常さに気づけないことです。
親の接し方によっては、子の人生をより困難にしてしまう恐れがあります。自分が過保護かもしれないと感じたら、周囲の親が子どもにどのように接しているかを参考にしてみましょう。
また、いきなり「自分でやりなさい」と言うと子どもが強い抵抗感を示すことがあります。すでにできることを褒めながら、子どもが自分でできることを増やしていくようにしてくださいね。
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