公園でブランコを「もっと!もっと!」と延々とせがまれたり、何もない部屋でクルクル回って目を回して笑っている我が子を見て、「目が回らないのかな」「そんなに揺れるのが好きなの?」と不思議に思ったことはありませんか。
実はこの行動はただの気まぐれではなく、脳が育つために必要な感覚を自分から取り込もうとしているサインだと言われています。この記事ではその仕組みを少し覗いてみましょう。
その「グルグル」の正体は、耳の奥にある“前庭覚”という感覚
体の傾きや回転、揺れを感じ取っているのは、内耳にある「三半規管」と「耳石器」です。
三半規管は主に頭の回転方向を耳石器は上下・前後・左右の直線的な動きや重力の向きを感知していて、この二つが合わさったものが「前庭覚」と呼ばれる感覚だと言われています。集められた情報は脳幹や小脳に送られ、姿勢を保つための筋肉の使い方を瞬時に調整しています。
さらに前庭覚は眼球の動きとも連携しており(前庭動眼反射)、体が動いていても視線をピタッと止めておく働きを担っています。走りながらボールを目で追ったり、黒板の文字をノートに写したりする動作の土台にもなっている感覚、というわけです。
赤ちゃんが乗り物酔いをしないのは、実は「発達の途中」だから
意外に知られていませんが、生まれて間もない赤ちゃんは基本的に乗り物酔いの心配がほとんどないと言われています。
乗り物酔いは目から入る情報と前庭覚が感じる揺れの情報にズレが生じ、脳がそのズレを処理しきれずに混乱することで起こる、いわば「感覚の統合エラー」です。そのため、脳の統合機能がまだ育ちきっていない乳児期にはむしろ起こりにくく、発症のピークは2歳前後から始まり、4〜5歳ごろで10人に1人程度、学童期になると3割程度にまで増えるとも紹介されています。
つまり「揺れに弱くなる」のではなく、「揺れの情報を細かく処理できるくらい脳が育ってきた」結果とも言えるのです。小さな子が回転遊具やブランコを平気な顔で楽しめるのは、こうした発達段階ならではの特権なのかもしれません。
前庭覚は「感覚の土台」。運動能力だけでなく集中力にも関わる
作業療法の分野で感覚統合理論を提唱したことで知られるA・ジーン・エアーズ氏の考え方では、触覚・前庭覚・固有覚(筋肉や関節の感覚)は、他のさまざまな発達を支える「土台の感覚」とされています。
ピラミッドの底辺にこの3つがあり、その上に姿勢の安定、体の使い方、目と手の協調運動、さらに学習や集中力といった能力が積み上がっていく、というイメージです。前庭覚は自律神経とも関わりが深く、ゆったりした揺れは気持ちを落ち着かせ、テンポの速い回転や跳躍は覚醒度を上げる方向に働くとも言われています。
「揺らして遊ぶ」という一見単純な行為が、姿勢や運動能力だけでなく、後の集中力にまでつながっている可能性がある、と考えるとなんだか面白くないでしょうか。
年齢によって「ちょうどいい揺れ方」は変わる
目安として、0〜1歳頃はゆっくりとした揺れを心地よく感じる時期で、抱っこでの揺らぎやゆったりしたブランコが向いているとされます。歩行が安定してくる1〜3歳頃は、低い遊具から少しずつ段階を上げていく時期。
バランス感覚が急速に発達するとされる3〜6歳頃になると、本格的なブランコや滑り台、トランポリンなど複雑な動きにも挑戦しやすくなっていきます。ここで見落とされがちなのが、子どもによって前庭覚の感じ方に個人差が大きいという点です。刺激に敏感なタイプの子に回転遊具や高い場所を無理に体験させると、かえって「怖い」という記憶だけが残ってしまいやすいと言われています。
本人が自分から近づいていくタイミングを待ち、大人は正面や横などよく見える位置から見守るのがポイントとされます。逆に刺激を人一倍求めるタイプの子には、高所から飛び降りるような危険な行動ではなく、トランポリンのように似た感覚を安全に得られる代替行動に置き換えてあげる工夫も有効だと紹介されています。
NEIGHBORFITでの取り組み:年齢別クラスと「あそびの空間」
登戸のNEIGHBORFITでは、0〜36ヶ月・3〜6歳・7〜9歳と年齢別に分けた運動あそび教室を用意しています。同じ「揺れる」「回る」遊びでも、月齢や年齢によって心地よいと感じる強さや、体の準備状態はまったく違うため、こうした年齢の区切りを大切にしています。
最大5名程度の少人数制なので、揺れが得意な子にも慎重な子にも、その子のペースに合わせた声かけがしやすいのも特徴です。館内にはボーネルンドプロデュースの「あそびの空間」を併設しており、親子で一緒にバランスや揺れを伴う遊具に触れられる環境を整えています。
パーソナルトレーニングやTRXグループトレーニング、ヨガなど大人向けのプログラムでも、実は体幹やバランス感覚は共通して大切な要素になっており、子どもだけでなく大人にとっても「揺らぐ体をコントロールする力」を見直すきっかけになるかもしれません。
まとめ
子どもが繰り返しせがむ「グルグル」「ユラユラ」は、脳が前庭覚という感覚を一生懸命育てている最中のサインだと考えると、見え方が少し変わってきます。
今日からできることとしては、公園でブランコや雲梯に付き合う時間を今より5分だけ延ばしてみる、揺れを怖がる子には「一緒にゆっくりから」で無理をさせない、逆に刺激を求める子にはトランポジンなど安全な遊びに置き換えてみる、といった小さな調整で十分です。もし「うちの子にはどんな遊びが合っているんだろう」と気になったら、専門スタッフのいる環境で一度試してみるのも一つの方法です。
