ヨガでは呼吸と瞑想が大切であるとよく言われますが、瞑想は、人の数だけ種類が存在すると言われるほどに多様です。
それは、人によって集中する対象が変わるうえに、集中を高めるための手段も異なるからですね。
しかし、古来の宗教観から瞑想を大きく分けるとすると、サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想の2つに大別できます。
そこでこの記事では、サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想を取り上げます。
それぞれどのような瞑想法で、そのメリットや種類、やり方にはどのようなものがあるかについて順番に解説します。
瞑想についての理解を深め、自分でも取り組んでみてくださいね。
目次
瞑想は2つに大別される
瞑想の方法はたくさんありますが、大別すると以下の2つにまとまります。
- サマタ瞑想
- ヴィパッサナー瞑想
サマタ瞑想は「止行」の瞑想といわれていて、高まった心を鎮める手段であり、精神集中を目的とします。
対してヴィパッサナー瞑想は「観行」の瞑想と言われていて、沈み込んだ心を活気づける手段であり、物事をあるがままに観察することを目的とします。
仏教においてはどちらかひとつを極めるのではなく、サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想の両方の習得を目指すことが一般的です。
サマタ瞑想は土台となる瞑想法:効果・種類・やり方
サマタとはパーリ語で「静寂」や「平静」を意味する言葉です。
瞑想によって心が静まり返った状態になることを目指します。
サマタ瞑想の目的は、集中力を高めて心を落ち着かせることです。
具体的には、呼吸やロウソクの炎、音楽など、何かひとつの対象に意識を集中させ、その他雑念を取り除いていきます。
サマタ瞑想の効果
以下は、サマタ瞑想に取り組むことで得られる効果です。
- 集中力や注意力の向上
- 心の平安
- 記憶力の向上
- ストレスの軽減
- 免疫力の向上
瞑想中は脳の前頭前野が活性化し、集中力や注意力が高まるのが最も大きな効果です。
集中力が増すことで、心身の健康維持のみならず、日常生活や仕事、勉強のパフォーマンス向上にもつながります。
サマタ瞑想の種類
サマタ瞑想は何か1点に意識を集中する瞑想方法であるため、初心者でも始めやすいという特徴があります。
さらに集中の対象がさまざまであり、多種多様な瞑想法を作りだせることから、世の中に広がりやすいという性質も持っています。
その中でも代表的なサマタ瞑想は以下の通りです。
- 呼吸の瞑想:意識を自分の呼吸に向ける瞑想法
- ジャバ瞑想:マントラを繰り返し唱える瞑想法
- リキタ ジャバ瞑想:マントラを紙に書く瞑想法
- トラタカ瞑想法:何か一点を見つめて意識を集中させる瞑想法
サマタ瞑想「呼吸の瞑想」のやり方
代表的なサマタ瞑想の中から、ここでは呼吸に集中する瞑想法のやり方を紹介しましょう。
- 床の上に楽な姿勢で座る。
- 軽く目を閉じ、深呼吸する。
- 呼吸に意識を向けながら、体から余分な力を抜いていく。
- 吸って・吐いてで「1」とカウントし、10までカウントしたらまた1まで戻る。
- 呼吸を数えることに集中する。
呼吸のカウントは、いくつまで数えなくてはならないというルールはありません。
100を過ぎても構わないし、20で折り返しても大丈夫です。
飽きたら終了するというのでもいいでしょう。
カウントしている間に雑念がわいてきたら、また数に意識を向け、集中するようにします。
ヴィパッサナー瞑想はステップアップした瞑想法:効果・種類・やり方
ヴィパッサナー瞑想は物事の本質を観察して、洞察を深めていく瞑想法です。
目的は、物事に対する気付きを深めること。
対象は人間の内側のもので、体の変化や感覚、感情、記憶、思考、理解などです。
雑念を消すのではなく、今この瞬間に浮かんだことがどのように変化していくのかを、ありのままに見るようにします。
ヴィパッサナー瞑想の効果
ヴィパッサナー瞑想の効果は、以下の通りです。
- 心の安定
- 後悔の減少
- 体が軽くなる
- 集中力の向上
ヴィパッサナー瞑想を続けているとあらゆる問題について余計な思考や妄想を膨らますことが減るため、心が安定してきます。
何か問題が起こってもそれをただ「出来事」として客観的にみられるようになり、イライラしたり悲しんだりすることが激減するのです。
問題は問題として認識し、妄想を膨らませて感情的にならず、自分の中で終了できるようになります。
ヴィパッサナー瞑想の種類
ヴィパッサナー瞑想の代表的な種類を紹介しましょう。
- 座る瞑想(静的瞑想):座って目を閉じその瞬間に感じることだけを意識する瞑想法
- 歩く瞑想(動的瞑想):自分の行動を認識しながら歩行する瞑想法
- 食べる瞑想(動的瞑想):食べるという行為を観察する瞑想法
ヴィパッサナー瞑想「歩く瞑想」のやり方
代表的なヴィパッサナー瞑想の中から、取り組みやすい「歩く瞑想」のやり方について紹介します。
- 背筋を伸ばし、音楽などは聴かないで真っ直ぐに歩く。
- 身体感覚に注意を向け、右足が上がったときに「右足が上がった」、それよりも足の裏が地面から離れたことを強く感じたら「足裏が地面から離れた」と感覚を観察する。
- 周囲の香りや音などからも受ける感覚を言葉にしていき、事実を受け入れて淡々と流していく。
- その瞬間、ありのままを感じるようにする。
ただ「歩く」といった行為を、気づきに変えていく瞑想法です。
歩きながら流れてきた匂いを嗅ぎ、「パンのいい匂いがする」と感じることを頭の中で言葉にするのですが、その後に「これは姉が好きなパン屋の匂いだから帰りに買って行こう」などといった思考はしません。
事実だけを受け入れ、個人の感情や思考を膨らませないようにします。
最初は「右足、左足、風が吹いた、右足」といった簡単なもの(事実、行動)を思い浮かべることからスタートしましょう。
慣れてくると、感覚や物事といった事実だけを流すように観察できるようになってきます。
瞑想初心者はサマタ瞑想からのスタートがおすすめ
マインドフルネスを始めたばかりの方は、サマタ瞑想から取り組むことがおすすめです。
その理由は先にも述べたように、方法がシンプルであることです。
何かひとつのことに集中する方法であるため、誰でもイメージがしやすく、慣れも早くなります。
おすすめは「自分の呼吸」を対象とし、吸った・吐いたの数を数える方法です。
サマタ瞑想を通して集中力を高め、心を落ち着かせる方法をまずは学び、それからヴィパッサナー瞑想に進むことで、物事をそのまま受け入れやすくなります。
つまり、サマタ瞑想はヴィパッサナー瞑想の土台とも言えるのですね。
マインドフルネス上達の秘訣は、焦らずじっくりと取り組むことです。
まずはサマタ瞑想で集中力を鍛え、心や頭の中から雑念を取り払う練習をしましょう。
その後、物事をありのままで観察する力をヴィパッサナー瞑想でつけられるようになると、日常生活に転がる小さなひとつひとつの現象に、心が乱され難くなります。
理想はサマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想の両方をバランスよく取り入れること
瞑想方法はサマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想の2つに大別できますが、どちらかを極めるというのではなく、どちらも両方ができるように修行していくという考え方が一般的です。
入口はどちらでも構いません。まずはやりやすそうだなと思った方から取り組んでみて、自分の頭を整理し、心を鎮められるように練習していきましょう。