古代インドより脈々と続いてきたヨガの最終目的は、解脱です。
そのために瞑想が必要であり、瞑想のためにアーサナ(ポーズ)や呼吸法があります。
呼吸を使って心身をよい状態に整える技術は、ヨガではプラーナーヤーマ(調気法)と呼ばれています。
実際にヨガの呼吸法には多くのメリットがあるため、ヨガをするなら呼吸についてもしっかり理解しておく方がよいでしょう。
そのためこの記事では、ヨガの呼吸法「プラーナーヤーマ」について、どのような考え方であるか、そして呼吸法が持つ効果や、代表的な呼吸法の種類について解説します。
目次
ヨガの呼吸法「プラーナーヤーマ」
ヨガの呼吸法はプラーナーヤーマと呼ばれ、古代インドにおいて最高の行とされていました。
プラーナーとは「気」のこと。ヤーマとは「制御する」という意味です。
プラーナーと呼ばれるエネルギーを制御するという意味ですが、その理論では、呼吸の方法によって体内の脈管を流れるエネルギーの性質を変化させ、全身にその信号を送って神経システムを刺激することで心身を整えます。
「生命エネルギー」と聞くとスピリチュアルで胡散臭い感じがする方もいるでしょう。
しかし要するに、現代で言うところの自律神経と同じようなものです。
科学がほとんど発達していない古代インドにおいて、自律神経という概念がまだないときにそれに該当するものを見つけ、コントロールする方法を掴んでいたということですね。
呼吸法は長いヨガの歴史の中で、環境や個人の体質、心の状態などに応じて調和をもたらすように工夫され、発展してきました。
ヨガの呼吸法が持つ効果
ヨガの呼吸法が持つ効果で、代表的なものをみていきましょう。
- 自律神経のバランスを整える
- 血流を改善する
- 筋肉を鍛える
自律神経のバランスを整える
自律神経は人が意思でコントロールできない、生命維持のために必要なものです。
交感神経と副交感神経があり、2つのバランスを保つことで人は健康を維持できます。
この自律神経は、日常生活において興奮モードである交感神経が多くなりすぎると、バランスを崩しがちに。
なかなかリラックスできず、肩こりや頭痛、情緒不安定などつらい症状が起こります。
ヨガの呼吸法は、深い呼吸を促すものです。全身にしっかり酸素を行き渡らせられるため、副交感神経が優位になりリラックスを得られます。繰り返していくうちに、自律神経のバランスを整えます。
血流を改善する
意識的に深く呼吸をするため、普段よりも多目の酸素が体内に取り込まれます。
また、リラックスすることにより血管が拡張され、栄養や酸素が隅々まで届きやすくなります。
筋肉を鍛える
呼吸をするときにも、人は筋肉を使っています。
普段の浅い呼吸とは異なり意識的に深い呼吸を繰り返すことで、呼吸に必要なインナーマッスルが刺激され、鍛えられます。
インナーマッスルを鍛えるメリットは、姿勢の改善や腰痛・肩こりの解消、基礎代謝の向上などです。
ヨガの呼吸法の基本! アーサナ(ポーズ)と共に行う2つの呼吸法
まずはヨガの基本呼吸を確認しましょう。
ヨガのレッスンでは、鼻呼吸と腹式呼吸がよく使われます。
ヨガを初めてするという方は、この2つの呼吸法を抑えておいてください。
【鼻呼吸】
鼻から吸って鼻から吐くのが鼻呼吸です。
鼻は呼吸をするための器官であるため、ウィルスや花粉、細菌などが体内に入るのを防ぐほか、喉の乾燥を抑えます。また、鼻呼吸は口呼吸に比べ、多くの酸素を取り込めます。
【腹式呼吸】
息を吸う際にお腹を膨らませ、息を吐く際にお腹をへこませるのが腹式呼吸です。
腹式呼吸は横隔膜を上下させるため、内臓を活性化させたり副交感神経を優位にしてリラックスさせる効果があります。
ヨガの代表的な単体呼吸法7つの特徴とやり方
上で紹介した鼻呼吸と腹式呼吸は、ヨガのアーサナ(ポーズ)をしながらする呼吸です。さらにヨガには、座ったまま、もしくは寝たままで行う呼吸単体の方法もあります。
以下7つの呼吸法を紹介しましょう。
完全呼吸
完全呼吸は、腹式呼吸・胸式呼吸・肩呼吸(鎖骨呼吸)の3つの呼吸をつなげて行う方法です。
全身に大量の酸素を行き渡らせ、脳の活性化や集中力向上に効果があります。
【やり方】
あぐらになって座り、鼻から息を吸ってお腹を膨らませます。
そのまま胸を広げて吸い続け、肩を上げて、これ以上無理という時点で鼻からゆっくり息を吐きだしお腹をへこませます。
胸や肋骨を中心に閉じていくように意識しながら、肩や鎖骨を下げて息を吐き切りましょう。
片鼻呼吸
片鼻呼吸は、左右の鼻で交互に呼吸する方法です。
左の鼻は副交感神経、右の鼻は交感神経とつながっているため、交互に使うことで自律神経の乱れを整える効果が期待できます。
片鼻呼吸の詳細ややり方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ウジャイ呼吸
ウジャイ呼吸は胸式呼吸のひとつ。
鼻から吸って胸を開け、鼻から吐いて胸を閉じます。口を閉じ、息を吐く際に喉の奥で摩擦音を出すというのが特徴です。
全身を温め、集中力を向上させます。
ウジャイ呼吸の詳細ややり方については、以下の記事で詳しく解説しています。
https://neighbor.fit/blog/ujjayi-breathing/
カパラバティ呼吸
カパラバティ呼吸は「火の呼吸」とも呼ばれている呼吸法です。
腹筋を強く締め、深く呼吸することで血流が促進され全身が熱くなります。
脂肪燃焼に効果的ですが、妊婦や特定の眼病を持っている方、高血圧の方はしないようにしてください。
【やり方】
座った状態で一度息を吐き切ります。
鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、お腹をへこませながら鼻から「ふっふっふっふ」とリズミカルに短く強く息を吐きましょう。30秒ほど続けます。
シータリー呼吸
口から吸って鼻から吐く、珍しい呼吸法です。
体温を下げる効果があるため、真夏の暑い日やホットヨガ後など、体温を下げたいときに行います。
【やり方】
楽な姿勢で座り、一度息を吐き切ります。舌先を丸め、ストローで水を吸うように息を吸います(シーという音が鳴る)。口を閉じて鼻から息を吐きましょう。
蜂の音呼吸
プラーマリーとも呼ばれる呼吸法で、目と耳を閉じ、ハミングの音を出しながら呼吸します。
ハミングの音が蜂の羽音に聞こえることから名付けられました。
心を落ち着かせる効果があるため、瞑想や睡眠前におすすめです。
【やり方】
姿勢を正して座り、両目を閉じます。
親指以外の4本指で瞼を軽く覆い、親指で耳の穴を閉じ、ゆっくり鼻から息を吸いこみます。
「んー」と低いハミングを出しながら、鼻から息を吐きだしましょう。
肩呼吸
鼻から息を吸って口から吐く呼吸法のひとつ。
呼吸に合わせて肩を上下に動かすことから名付けられました。肩や首周辺をほぐす効果があります。
ヨガのアーサナの前など、上半身から力を抜きたいときにおすすめです。
【やり方】
楽な姿勢で座り、息を吐き切ります。鼻から大きく息を吸い、肩を上げて耳へ近づけましょう。
口から大きく息を吐きながら、肩をストンと下げます。
ヨガの呼吸法で心身を整えよう
ヨガの呼吸法にはさまざまなものがありますが、いずれも心を鎮め、体中に酸素を行き渡らせられます。
まずは基本の鼻呼吸と腹式呼吸を練習し、そのうえで興味があれば、他の呼吸法も試してみてくださいね。