「体を動かしてみたら気持ちがスッキリした」とか「イライラしていた気持ちが運動したらなくなった」といった経験を持つ方は多いでしょう。
実は、運動によって脳が活性化し、さまざまな恩恵を受けられることが近年の研究で確認されています。運動することによるメリットは、ダイエット効果や成人病の予防をしたりといった身体的なメリットだけではないのです。
この記事では、運動と脳の関係や、運動によって脳が活性化するメカニズムと得られる具体的なメリット、どのような運動が脳を活性化させるのかについて紹介します。
目次
運動によって脳が活性化する! そのメカニズム3つ
まずは、なぜ運動すると脳が活性化するのか、そのメカニズムを3つ紹介しましょう。
- 脳と運動器官との頻繁なやり取り
- 神経細胞の栄養源の分泌による海馬の発達
- 血流促進による十分な酸素と栄養
メカニズム①:脳と運動器官との頻繁なやり取り
人が何かの動きをするには、ひとつひとつの行動において脳が各機関とそれぞれにやり取りしなくてはいけません。さまざまな動きが同時に必要となる「運動」では、脳から筋肉や関節などの運動機能に指令が出るのですが、この際、運動器官から脳へも命令信号が送られます。
そうやってお互いに刺激し合うことで、つながりが太くなって体が上手に動かせるようになり、脳も活性化します。
メカニズム②:神経細胞の栄養源の分泌による海馬の発達
有酸素運動を行うと、人の頭の中では神経細胞の栄養源(BDNF)が分泌されます。
BDNFは「脳由来神経栄養因子」と呼ばれる分布告生タンパク質です。このBDNFが分泌されることによって、脳のシナプス(神経と神経のつなぎ目)が増え、複雑化して記憶や学習を司る海馬が発達していきます。
日本には古くから「文武両道」という言葉がありますが、実際に運動をする人は脳が発達しやすいという事実も、近年の脳科学研究では証明されています。
参考:神戸大学「習慣的運動は子供の脳の発達を促す ~認知機能の個人差によって異なる運動の効果~」
メカニズム③:血流促進による十分な酸素と栄養
運動をしていると、人は取り込んだ酸素をエネルギー源として脂肪を燃やし、全身の血流を促進させます。その結果、脳にも十分な血液が行き渡り、酸素と栄養がとれるようになるのです。
脳の神経が活発に活動する際には大量の酸素が消費されます。そのため、運動して血流促進することで脳にも血液と共に酸素が流れ込み、より頭を使いやすくなるわけです。
運動によって得られる脳からのメリット6つ
運動をすることで得られるのは「病気の予防」や「ダイエット」が思いつきやすいですよね。しかし、その他にもメリットはたくさんあります。
運動すると脳からはさまざまな物質が分泌されますが、それら分泌物によって得られるメリットを、ここで6つ紹介しましょう。
- 記憶の強化
- 業務遂行能力の向上
- モチベーションの向上
- ストレス発散
- 精神的安定
- 精神疾患の予防
記憶の強化
前述した通り、運動によって海馬が刺激されることで、発達します。その結果、頭の回転が速くなり仕事の要領が良くなります。たとえば何かを思い出したいときに、頭の中にある引き出しを迷わず開けられるようになるイメージです。
業務遂行能力の向上
集中力・判断力・創造力などの脳機能が向上するため、業務遂行能力が全体的に良くなります。
何かの判断をしなくてはならないときも迷わずに済み、迅速に処理できるようになるため、コミュニケーションコストもかからなくなるでしょう。
モチベーションの向上
運動によってドーパミンが分泌されるため、やる気がでやすくなります。またそのモチベーションの維持・向上も期待できます。
ドーパミンは「やる気物質」と呼ばれることもある、神経伝達物質です。体を動かすことでドーパミンが脳内で分泌され、幸福感や情報処理能力の向上効果が得られます。
軽いランニングやトレーニング、子供との遊びなどでその後に清々しい気分になるのは、このドーパミンが影響した結果です。
ストレス発散
運動することで交感神経が優位になる時間が長くなります。交感神経が優位ということは、活動的な状態であるということですね。この交感神経が優位なとき、人はポジティブになりやすくなります。
運動でストレスが発散できるのは、ストレスに対して効能があるセロトニンというホルモンと、気分を良くする効能があるエンドルフィンというホルモンが分泌されるからです。
セロトニンは体内で自然に生成されますが、日常的に運動を続けることで安定的に分泌されます。
精神的安定
ストレス発散と同じく、セロトニンが分泌されることによって精神の安定や平常心を得られるようになります。セロトニンは精神安定剤とよく似た分子構造をしており、運動によって分泌・活性化してイライラや怒りの気持ちを軽減してくれます。
精神疾患の予防
現代病とも呼ばれるうつ病や不安障がい、パニック障がいといった精神疾患は、実は脳機能の障がいでもあります。
これらは幸福ホルモンであるセロトニンの減少が発症原因のひとつです。そのため、運動してセロトニンの分泌を促すことが発症の予防につながります。
また実際に、精神疾患を持つ方には療法として「運動やトレーニングをすること」が推奨されています。
脳を活性化させる運動
前述したように、脳を活性化させるには血流促進が必要不可欠であるため、心拍数を上げることが大切です。
心拍数を上げることを考えるとウォーキングよりは走る方が効果的ですが、いきなり運動すると関節や筋肉を傷める方もでてくるでしょう。そのため、まずはウォーキングや縄跳びから始めることがおすすめです。
早足のウォーキング
ウォーキングと散歩は厳密に言えば違います。散歩ではリラックスを目的として、自分のペースで景色を楽しみながらゆっくり歩くことがすすめられますが、ウォーキングでは早足が推奨されます。
効果的なウォーキングをするためのポイントは、以下の通りです。
- 何とか話しができる程度の早足で歩く
- 音楽などは聴かず、頭の中で歩くリズムを思い浮かべる
- 1回の運動は20~40分程度
歩き終わったときに額がうっすらと汗ばむ程度の運動量が効果的です。また、セロトニンをしっかりと出すためには目から紫外線を入れることが大切なので、サングラスはしないようにしましょう。
縄跳び
縄跳びは長い紐があればすぐにできる、優秀な有酸素運動です。飛ぶことによってバランス力や心肺機能の向上も期待できるうえ、全身の筋肉をしっかり刺激できます。
縄跳びで心拍数を上げるなら、10回は縄のスピードを早くして連続飛びし、そのあと10回は力を抜いて飛ぶ、といったインターバルがおすすめです。10回ずつ3回繰り返すようにしましょう。
運動して脳を喜ばせよう! 毎日少しの有酸素運動が全身の健康を守る
運動をすることで、たくさんのメリットがわたし達にもたらされます。ダイエットや肥満による病気を防げるといったことだけでなく、脳から出る分泌物によって頭の回転が速くなったり記憶力がよくなったりといった恩恵も受けられるのです。
脳を活性化させたいなら、手っ取り早い方法としては心拍数が上がる運動をすること。短い時間でも効果的なため、簡単な有酸素運動を行いましょう。
また、いずれにせよ運動を継続することが大切です。毎日忙しいという方でも隙間時間を見つけ、移動の際には早歩きをするなどに取り組んでみてくださいね。
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