産後の女性は体力の低下のみならず、骨盤周辺の歪み、ホルモンの乱れによる情緒不安定、授乳時の体勢による肩こりや腰痛などさまざまな症状が起こり、厳しい状況に置かれます。
そんなときにおすすめしたいのが、産後のヨガです。
この記事では、産後にヨガがおすすめな理由や始められる時期、産後の時期別におすすめのヨガポーズを解説します。
ヨガのサポートを受けながら、焦らず、ゆっくりと心身を整えていきましょう。
産後にヨガはなぜおすすめ? 得られる3つの効果
ヨガはそもそもポーズと呼吸に集中し、心身を整える運動です。
出産でダメージを受けた心身の緩和にさまざまな良い影響を与えますが、特に期待できる効果は次の3つがあります。
- 骨盤底筋のケア
- 産後のメンタルケア
- 産後の体の不調緩和&防止
骨盤底筋のケア
骨盤底筋とは骨盤の底に位置する筋肉で、ハンモック状をしています。
妊娠・出産で骨盤底筋はダメージを受けますが、そのまま放置すると弛緩して尿失禁などのトラブルが発生します。
産後ヨガのポーズは骨盤周辺を刺激して引き締め効果が高いため、血の巡りを良くし、骨盤底筋がケアできます。
産後のメンタルケア
産後はホルモンバランスが乱高下し、ストレス耐性が弱くなります。
普段よりも刺激に弱く、悲しみや疲れなどを感じやすくなっているのですね。
ヨガの呼吸やポーズに集中することでストレスホルモン(コルチゾール)を低下でき、さらにリラックスできるので、前向きな気持ちが維持しやすくなります。
産後の体の不調緩和&防止
産後は出産のダメージに加え、慣れない育児で肩こり、睡眠不足、疲れやすさ、腕の痛み、腰痛などがでてくるもの。
ヨガで深い呼吸をしながら全身の筋肉を伸ばすことで、肩こりや腰痛といったコリにアプローチします。つらいさまざまな症状を緩和&防止できますよ。
産後ヨガはいつから始められる?
産後はしばらく体を休める必要があります。
ヨガを始める時期は、自然分娩なら産後1カ月、帝王切開なら産後3カ月からが目安です。ただし、いずれも医師のOKが出てから始めるようにしましょう。
とは言え骨盤矯正が目的である場合、実際には産褥期である産後すぐからスタートさせなければなりません。
出産で緩んだ骨盤は産後から数カ月で硬くなるため、それまでに位置を戻し、開いた骨盤を閉じておく必要があるのですね。
そこで、おすすめなのは産前からマタニティヨガへ通うことです。多くのレッスンで産後ヨガについて前もってアドバイスがあり、産後すぐにどのようなポーズ・呼吸法をすればいいのかを教えてくれます。
産後に初めてヨガに取り組む場合は、医師の許可が下りてから、次で紹介する簡単なポーズでスタートさせてくださいね。
産後に行いたいヨガのおすすめポーズ
産後の時期別におすすめしたいポーズを解説します。痛みや疲れが残っている体ですので決して焦らず、無理をしないようにし、呼吸やポーズに向き合いましょう。
なお、産後ヨガも通常のヨガと同じように、食後すぐに取り組むことはやめてください。消化の妨げになるため、食後2時間は空けるようにします。
【産後1日目~】屍のポーズ(シャヴァ・アーサナ)
産後1日目は体が万全ではなく、疲労も大きく残っているはず。トイレと授乳以外は動いてはいけない時期です。
そのため、取り組んで良いヨガも屍のポーズと腹式呼吸のみとなっています。
屍のポーズは「心の解放」「深いリラクゼーション」「疲労回復」が目的のポーズです。全身から力を抜いて寝転ぶことで究極のリラックスを感じ、心身から癒されてください。
【屍のポーズのやり方】
- 仰向けに寝転がり、足は肩幅よりやや広めに開く。
- 両手はお尻の横につけ、手のひらを上へ向ける。
- 自然に呼吸を繰り返し、自分の呼吸の音だけを聞くようにする。
肩甲骨や二の腕が床にぴったりついているようにしましょう。全身の重みを感じるようにすると、スムーズに力が抜けます。そのまま眠っても構いません。
余裕があれば、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、時間をかけて吐き出す腹式呼吸にも挑戦してください。
腹式呼吸のやり方は、こちらの記事で紹介しています。
関連記事:「マインドフルネスとは? 瞑想の違いとマインドフルネスに効果的な3つの呼吸法を解説」
【産後1週間目~】橋のポーズ(セツ・バンダ・アーサナ)
寝転んでお尻を持ち上げるだけの簡単なポーズです。橋のポーズではヒップアップはもちろんのこと、お腹のインナーマッスルや骨盤底筋を鍛えられます。多くの経産婦が悩まされる尿失禁などのトラブル予防に効果的ですよ。
【橋のポーズのやり方】
- 仰向けに寝転び両膝を立てて、両手はお尻の横あたりで手のひらを下へ向ける。
- 息を吸いながらお尻を持ち上げて、両ひざの真下にかかとがくるように調節する。
- 首元から膝までが一直線になるようにして、5回呼吸を繰り返す間キープする。
- 元の体勢に戻す。
お尻を持ち上げている間、お腹に力を入れた状態でいましょう。ただ持ち上げているだけでは効果が減少します。お腹と下半身に意識を向けてください。
【産後1カ月~】合蹠(がっせき)のポーズ(バッダ・コーナ・アーサナ)
蹠は「足の裏」という意味であるため、合蹠は「足の裏同士を合わせたポーズ」のことです。股関節の柔軟性に効果的で、骨盤周辺を柔らかくほぐし、股関節の動きや血の巡りを良くします。
【合蹠(がっせき)のポーズのやり方】
- 床の上に座り、両足を曲げて足の裏を合わせて両手で握る。
- 背筋を伸ばし、息を吐きながら上半身を前に倒す。
- そのまま呼吸を5回繰り返し、ゆっくりと元の体勢に戻す。
このポーズの目的は、膝を床につけることではありません。膝を左右に倒すというよりは、自分の体重をかけて押すというイメージです。そのため股関節が硬い方は無理に開かず、できるところまでやってみてくださいね。
【産後2カ月~】鷲のポーズ(ガルダ・アーサナ)
少しずつ体が回復してきたところで、鷲のポーズに取り組みましょう。
鷲のポーズはヨガの基本ポーズの一つであり、多くの効果があることで有名です。
冷えの改善、肩こりや腰痛の緩和・予防、骨盤を閉める効果が期待できます。
【鷲のポーズのやり方】
- 足を肩幅に開いて立ち、両手を腰に添える。
- 両膝を曲げて左脚を右脚の太ももの上にのせる。
- 両手を体の前へ伸ばして右腕の上に左腕をのせてクロスする。
- 左右の肘を重ねて両肘を曲げ、手の甲を合わせる。
- 左脚の膝の下に右脚を絡ませる。
- 息を吸いながら肘を肩のラインまで上げ、目は指先を見る。
- そのまま2回呼吸する。
- 左右を変えて同様に行う。
体が硬い方やバランスを取りにくいという方は、軸足に反対の足を絡ませずに取り組んでください。できるだけ上半身から力を抜きましょう。
産後ヨガで心身をゆっくりケア! 焦らず全身を整えよう
産後は心身が万全でない中で新生児のお世話も始まる、幸せでも大変な時期です。
この時期に無理をすると後の健康に大きな影響を与えるとも言われているため、できるだけ自分のケアもしていきたいですよね。
産後ヨガは、心身が乱れがちな時期の女性にぴったりの運動です。無理をせず、できる範囲で体を伸ばし、ポーズに合わせて深く呼吸をしてみてください。
少しずつ心身のバランスを整えて、元気を取り戻していきましょう。
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