ヨガを構成する要素にはさまざまなものがありますが、中でも大切だと言われているのが「呼吸」です。
通常、多くのヨガでは腹式呼吸を行います。
しかし、中には胸式呼吸を利用するヨガもあり、そのひとつが「ウジャイ呼吸」です。
日本語では勝利の呼吸と訳されるウジャイ呼吸とは、どのようなものでしょうか?
今回は、ウジャイ呼吸について解説します。
ウジャイ呼吸の効果や正しいやり方、ポイントなどを順番に紹介しますので、ぜひ参考にして取り組んでみてください。
目次
「勝利の呼吸」ウジャイ呼吸とは?
ウジャイ呼吸は胸式呼吸のひとつです。
鼻から息を吸って鼻から吐く、ハタヨガの基本的な呼吸法とされています。
バンダと呼ばれる身体技術と合わせて行い、生命エネルギーの流れをコントロールすることが目的です。
特徴は、喉の奥から「シュー」という摩擦音が出ること。
呼吸音を出す理由は、見えない呼吸を意識しやすいようにするためと、呼吸の質をより高めるためです。
「ウジャイ(ujjayi)」はサンスクリット語の「ウド」と「ジャヤ」から成り立っている言葉で、ウドは「広がり」や「上昇」という意味を持ち、ジャヤは「成功」や「征服」という意味を持ちます。
ウジャイ呼吸をすることによって肺を拡張させて大きくし、それが胸を張った征服者のように見えるため、名付けられたと伝わっています。
呼吸音は本来さほど大きくない
ヨガのレッスン中に講師や隣の人の呼吸音が聞こえる環境にいると、大きい音を出そうと無理に頑張る方がいます。
しかし、ウジャイ呼吸の目的は大きな呼吸音を出すことではないため、音に固執しないようにしましょう。
古代から伝わる教えでは、ウジャイ呼吸は「自分にだけ聴こえ、隣の人には聴こえないくらいの音」であり、本来、大きな呼吸音を出す必要はありません。
現代では比較的大きな呼吸音を出す方がよいとされることもあるのですが、無理に出そうとすると喉に炎症が起きたり過呼吸を起こしたりといったリスクがあります。
また「集中とリラックスを共存させるために行う」というそもそものウジャイ呼吸の目的からかけ離れてしまうため、自分のペースで進めていくことがおすすめですよ。
ウジャイ呼吸で期待できる5つの効果
以下は、ウジャイ呼吸で期待できる効果5つです。
- 体を温める
- 自律神経を整える
- 内臓機能を活性化させる
- 基礎代謝を向上させる
- 頭を鎮静させる
- 姿勢改善
ウジャイ呼吸をすることで体内の換気量が増え、体が温まります。
その結果、血行が促進されるだけでなく、内臓器官などを刺激して活性化させることなどが期待できます。
また、音を出して呼吸することにより集中力が増し、頭を鎮静化させたり心を安定させたりする効果もあるでしょう。
ウジャイ呼吸中はインナーマッスルに負荷をかけて刺激するため、筋肉が鍛えられ、姿勢改善や基礎代謝の向上も見込めます。
ウジャイ呼吸をおすすめできない場合
ウジャイ呼吸は、バンダと呼ばれる部分、骨盤底や腹部、喉などに力が入り締め付けるため、以下の状態の方にはおすすめしません。
- 食後すぐ
- 生理中の方
- 妊娠中の方
- 高血圧の方
胃腸が活動しているときに締め付けると気分が悪くなる恐れがあります。
また、高血圧の方は、ウジャイ呼吸に挑戦する前に必ず医師に相談してください。
ウジャイ呼吸の正しいやり方
では、ウジャイ呼吸のやり方をみていきましょう。
- 楽な姿勢で座り、背筋を真っ直ぐにする。
- 鼻からゆっくりと息を吸いこむ。
- このとき、少し喉の奥を締める意識をして「シューッ」というような音を出す。
- 口から息を吐きだす。
- このとき、冬に息で手を温めるように「ハー」と音を出す。
- 吸うときと吐くときを同じ長さにして、鼻から吸って口から出すを数回繰り返す。
- 慣れてきたら口を閉じ、鼻で吸って吐くようにする。
無理に喉から音を出そうとしないようにしてください。
息を吸うときも吐くときも、お腹を凹ませることが大切です。
ウジャイ呼吸を行う際のポイント
次の3つは、ウジャイ呼吸を行う際のポイントです。
- 手を温めるような「ハー」で喉の奥を締める感覚をつかむ
- 鼻呼吸に切り替えたら舌は定位置に置く
- 自分の呼吸音に集中する
手を温めるような「ハー」で喉の奥を締める感覚をつかむ
自分の顔の前にガラスがあると想像し、そのガラスを曇らせるつもりで(もしくは冬場に自分の冷えた指先を温める感じで)はあーと息を出してみましょう。
何度か試すと「喉を締める」感覚がわかってきます。
続いて今度は自分の頭の後ろにガラスがあると想像し、そのガラスを曇らせるようにはあーと口から息を吸います。同じように喉を締めていると、自然に音が出てきます。
鼻呼吸に切り替えたら舌は定位置に置く
口から息を吸い吐きして喉を締める感覚を掴んだら、口を閉じて鼻呼吸に切り替えます。
この際、舌先は前歯の裏側の上部(上顎と前歯の境目にある少し凹んだ箇所)に置くようにすしましょう。
この場所は、本来口内で舌がいるべき場所です。上下の歯がかち合っておらず、口内がリラックスした状態を指します。
▼以下の記事で片鼻呼吸について解説しています。
自分の呼吸音に集中する
目を閉じて、自分の繊細で小さな呼吸の音に耳を澄ませましょう。
慣れてくると自然に摩擦音が出てきますので、頑張る必要はありません。
ウジャイ呼吸の他にもあるヨガ特有の呼吸法
ウジャイ呼吸の他にも、ヨガには特有の呼吸法がいくつかあります。
その中から、ここではカパラバティ呼吸とシータリー呼吸を紹介しましょう。
- カパラバティ呼吸
- シータリー呼吸
カパラバティ呼吸
カパラバティ呼吸は、鼻から息を力強く吸って、鼻から一気に吐き出す呼吸法です。
腹筋を手で触って意識しながら、吸って、吐いて、と1秒に1回程度の早いペースで素早く行います。
特徴は、力強い呼吸を素早く行うこと。
肺や横隔膜を強く動かすため、血行促進やお腹の引き締めに効果的です。
ただし、体への負担も大きくなります。
心疾患がある方や妊婦の方、高血圧症の方は控えましょう。食事の後も避けてください。
シータリー呼吸
シータリー呼吸はゆっくり息を吸ったり吐いたりする呼吸法で、体を冷やす効果があります。
舌を口から少しだけだし、ストローのように丸めて息を吸います。吐くときは鼻からで、ゆっくりと吐くようにしましょう。
吸うときに舌先を丸めることで冷たい空気を体内に取り込めます。そして鼻から息を吐きだすことで、体内の温かい空気を外に逃がすのですね。
結果的に、体温を下げられます。
気分転換をしたいとき、スポーツの後で体が熱いときなどにおすすめです。
ウジャイ呼吸による深い呼吸で体を強くし心を安定させよう!
ウジャイ呼吸は、ヨガの呼吸法の中では珍しく、胸式呼吸のひとつです。
胸を大きく膨らませて呼吸をするため、一度に大量の空気を得られるようになり、全身に酸素を届けることで体が温まります。
下腹部の引き締めや体幹の強化など見た目にもメリットが多い呼吸法ですが、腹部に力を入れるため、妊婦さんや高血圧の方は避けてくださいね。
しっかりした深い呼吸は、心身を整えます。
ただし、ウジャイ呼吸特有の「喉の摩擦音」を出すことだけにこだわらないようにしましょう。
練習により、音は自然に出せるようになりますよ。