子供の成長過程を振り返ってみると、小さかった頃はよく躓いたり、転んだりしてしまっていましたが、少し大きくなってくると躓くことはあっても転ぶことはなくなってきたと思う方もいるかと思います。
子供が転びにくくなった理由は筋肉や骨格など身体の成長も当てはまりますが、空間を見たときに状況を把握する力『空間認識能力』も発達していることも大きく影響しています。
空間認識能力とは、自分の周囲の空間を目で見た時に状況を把握して、その物事や事柄に適切に反応する能力です。
足場の悪いところを歩いたり、自転車や車を運転したり、野球やサッカー、バスケなどの球技をおこなうときには、空間認識能力が活かされます。
この記事では、空間認識能力の概要、空間認識能力の重要性や発達の過程、そしてその能力を鍛える方法と空間認識能力が役立つ職業について解説します。
空間認識能力とは
空間認識能力とは、私たちが自身の位置や方向、そして物体の形状や配置を理解するための能力です。
物体と自分、物体と物体の間の距離や大きさ、形状、位置関係などを認識・把握し、それに基づいて自分自身の動作を調整するのに役立ちます。
例えば、人が多く行き交う場所で人にぶつからないように歩く、飛んできたボールの落下地点までの動作、地図上の目的地を特定する能力や自分の現在地の把握などの行動に、空間認識能力が活かされます。
空間認識能力と空間認知能力、空間把握能力の違い
こちらについてはどの言い方も同じ意味として使われていることが多く見受けられます。
「認識」「認知」「把握」それぞれの単語の意味は異なりますが、要約すると「その空間で目にしたモノがどのようなモノなのか(方向や形、大きさ、距離感など)を認知、理解する能力」なのではないでしょうか。
認識 … 物事をはっきりと見分け、判断すること。そういうふうにして物事を知る、心の働き。また、その知った事柄。
認知 … ある事柄をはっきりと認めること。
把握 … つかむこと。にぎりしめること。転じて、しっかり理解すること。
参考サイト:goo辞書 – 国語・英語・四字熟語のオンライン辞書
ただ「空間認識能力」「空間認知能力」「空間把握能力」も同じ意味で解説されていることが多いので、どちらの文言を用いても問題ないのではないでしょうか。
空間認識能力は子どもに重要な能力
空間認識能力は、生活する上でも基本的なスキルを形成するうえで重要な能力です。
日常生活の一部として自然に身につくスキルであり、遊びやスポーツを通じて特に能力が発達します。具体的には、お絵描きやブロック遊び、野球やサッカー、バスケなどの球技が該当します。
これらの遊びやスポーツは子どもの空間認識能力を鍛えること、そして自分自身の位置とその関係を理解するのに役立つでしょう。
空間認識能力はおおよそ3歳〜5歳頃に発達する
子どもの空間認識能力は、主に3歳から5歳の間に大きく発達すると言われています。
3歳から5歳ごろは、物の向きや位置、形状、大きさ、そして自分と物体の距離感や位置関係を理解し始める時期です。
例えば、ブロックを使った遊びでは、ブロックの形状やサイズを把握し、自分が作りたいものにはどのようなブロックが必要なのかを認識する能力が育まれます。
またブロック遊びでは、建物や乗り物を作ったりすることで、より空間認識能力を養うことができます。建物や乗り物を作る場合、どのような大きさにすれば見た目のバランスが調和されるかなど少し高度ではありますが、感覚も養うことも期待できます。
空間認識能力は子どもの創造力(イマジネーション)を伸ばすだけでなく、幾何学的な理解や問題解決能力の発達にも寄与します。
空間認識能力を伸ばすことのメリット
空間認識能力を伸ばすことで得られるメリットは主に5つ挙げられます。
- 上手に絵や図形を描くことができる
- 球技系のスポーツが得意になる
- 地図を読めるようになる
- 危険察知や危機回避がうまくなる
- お片付けや整理整頓が得意になる
勉強に関するスキルはもちろん、日常生活やスポーツでのパフォーマンスを向上させ、さらには将来的に職種によっては仕事にも対応できる力を育むことが可能です。
上手に絵や図形を描くことができる
空間認識能力を伸ばすことで、子どもたちは物の形やサイズを正確に把握できるようになります。その結果、描きたいモノとモノの距離感や大きさを理解した上で描くことができるようになります。
3Dの物を2Dの紙に描く際に、必要な視点の切り替えや形の捉え方は、アートの世界では大変重要な要素です。
球技系のスポーツが得意になる
空間認識能力が発達すると、子どもたちは物体の距離やスピード、方向を正確に認識、把握することができます。
例えば、野球やサッカー、バスケットボールといったスポーツでは、味方からボールをパスされることがあります。そのバスされたボールの位置や速さ、方向、自分との距離を把握するために必要な空間認識能力は非常に重要なスキルで、このスキルが発達しているほどボールを捕球したり、仮に味方がパスをミスしてしまってもスムーズにリカバリーすることができます。
特にサッカーやバスケットボールは相手と味方を含めて、十数人のプレイヤーが同じフィールドにいます。また、サッカーやバスケットボールは相手と味方のポジションチェンジが目まぐるしくおこなわれ、その時々によって求められる動作や補わなければいけない動作が異なります。
空間認識能力はこれらの状況を見て把握することで、どのような動作をした方がいいのか、自分がどこにいて何ができるのか等さまざまなことができるようになり、結果として得意となるということでにつながります。
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地図を読めるようになる
地図を読むスキルは空間認識能力の一部です。
空間認識能力が発達すると、子どもたちは自分の位置や目的地を正確に理解できるようになります。
公園での宝探しゲームから旅行先での新しい場所の探検まで、子どもたちが自分の位置を理解するのに役立つでしょう。
危険察知や危機回避がうまくなる
空間認識能力は私たちが危険から身を守る上で重要な役割を果たします。
例えば、子どもが横断歩道を渡る時、車の進行方向や自分と車の距離と車の速度を判断し、安全に渡るために最適なタイミングを見つけるためには空間認識能力が必要です。
また、自転車を運転する際も、自分と物体や人との距離、位置関係を把握し、安全に走行するためにはどの程度の距離やどの速度で進行したら良いのかを判断するためには、この能力が大いに役立ちます。
お片付けや整理整頓が得意になる
空間認識能力が育まれると、物体の大きさや重厚感、その物体の数を把握することができますので、整理整頓や片付けのスキルを磨くことができます。
例えば、おもちゃを片付けるときに、どのおもちゃがどの大きさの箱に入るのか、どの本がどの高さの本棚に収まるのかを理解できるようになります。
また、旅行を行く際にスーツケースに服や日用品など持っていくものを積めます。その際、シャツやパンツは何着入るか、日用品はどの大きさなら入るのか、カメラやPCなど大きなものはは入るのかなど把握し対応できるようになります。
これらはすべて、空間を最適に利用するためのスキルであり、日常生活にも影響が大きいと言えます。
空間認識能力を高める方法
子どもの空間認識能力を高める方法は多々ありますが、その中でも、特に効果的な方法は以下のとおりです。
- つみきやブロック遊び
- 折り紙
- お絵かき
- 運動あそび
つみきやブロック遊び
ブロック遊びはまさに空間認識能力を育てる遊びの王道です。
子どもたちは形状や大きさが異なるブロックを使って、まるで小さな建築家のように自分だけの建物や城を作り上げます。
その過程で、ブロックのバランスや安定性、そしてどのブロックがどの位置に来るべきかという空間的配置を自然と学びます。
ちょっとしたブロックの積み上げが、子どもの頭の中で立体的な世界を形作るのです。
折り紙
折り紙は、日本の伝統的な遊びとして、子どもの空間認識能力を育てる素晴らしい遊び道具です。
平面的な紙が折られることで、立体的な動物や花、星など様々な形に変身します。
子どもたちは、作りたい形を目指して紙を折っていく過程で、形状の変化と空間的な関係を深く理解できるようになります。
形を変えていく折り紙は、子どもたちの創造力を刺激し、空間認識能力を高めていくことでしょう。
お絵かき
お絵描きは、子どもたちの創造力を発揮させるだけでなく、空間認識能力を育てるのにも大変役立ちます。
白紙のキャンバスに絵具の色彩を散りばめることで、子どもたちは平面上に立体的な世界を描き出します。
例えば、山や家、人々や動物たちを描くことで、子どもたちは形状や視点、比例感覚を身につけます。
ペン先一つで世界を描き出すこの遊びは、空間認識能力の発展にとって欠かせません。
運動あそび
運動あそびは、子どもたちが自分の身体と周囲の空間の関係を感じる上で大切なアクティビティです。
ボールを追いかけたり、友達と追いかけっこをしたりする中で、子どもたちは自然と距離感や速度感、そして方向感覚を身につけていきます。
また、公園の遊具を使ってジャングルジムに登ったり、滑り台を滑ったりすることも、身体と空間の関係性を理解するのに役立ちます。
子どもたちが楽しみながら運動する過程で、空間認識能力は自然と育まれていくことでしょう。
空間認識能力が役に立つ職業
空間認識能力が養われることで、多種多様な職業で力を発揮できます。
- CADなどを使う設計士
- スポーツ選手
- ゲームクリエイター
- システムエンジニア(SE)
1つずつ解説します。
CADなどを使う設計士
建築家やデザイナーの方々は、空間認識能力を最も活かす職業の一つです。
彼らが使うCAD(コンピュータ支援設計)というツールは、思い描いた立体的な形状や寸法を二次元の図面に落とし込むのに必要不可欠です。
空間認識能力が高いと、これが自然とできるようになり、理想とする形を現実に近づけることができます。
スポーツ選手
スポーツ選手は、ゲームの瞬間瞬間でボールの位置や動き、チームメイトや相手の位置を素早く把握し、最適な行動を取らなければなりません。
空間認識能力が高ければ、情報をすばやく正確に捉え、適切な反応を示すことができます。
ゲームクリエイター
ゲームクリエイターは、仮想空間の設計者であり、視覚的な作り手でもあります。
具体的に言いますと、ゲームクリエイターは、プレイヤーがゲームの世界を楽しく、スムーズに進むことができるように、空間を設計します。
空間認識能力が高ければ、プレイヤーがどう動くか、どの視点が最適かなどを予想し、最適なゲーム体験を提供できます。
システムエンジニア(SE)
システムエンジニアは、複雑な情報システムの設計や開発に携わります。
システムの各部分やその間の関係を理解し、視覚的に表現する能力が求められます。
空間認識能力が高ければ、その複雑さを把握し、効果的な解決策を提案できるようになるでしょう。
まとめ
空間認識能力は、生活の様々な場面や職業において重要な役割を果たします。
子どもの頃から遊びを通じて自然と育まれるこの能力は、成長するにつれてさまざまな形で活かされます。
子どもたちの日々の遊びや学習に意識的に取り入れることで、未来のキャリア選択にも影響を及ぼす可能性があるのです。
親としては、そんな可能性を子どもたちに提供できること、それ自体が一つの喜びではないでしょうか。
▼参考サイト
最近注目されている「空間認識能力(空間認識力、空間認知能力、空間把握能力)」 | ロボ団ブログ
空間認識能力とは?高い人の特徴や鍛える方法、おもちゃなどをご紹介!
空間認識能力とは?子供が遊びながらできるトレーニング方法を紹介|こども教育総合研究所
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