ヨガは呼吸とポーズを通して瞑想状態を目指す、心と体のバランスを整えるエクササイズです。
ヨガの呼吸法にはさまざまなものがありますが、その中でも意識的に呼吸をすることで自律神経を整えるとされるものが「片鼻呼吸」です。
リラックス効果があるため、緊張や焦り、不安、イライラなどを解消できます。
この記事では、ヨガの片鼻呼吸(ナーディショーダナ)について、どのような呼吸法で期待できる効果は何か、正しい片鼻呼吸のやり方、そして片鼻呼吸をしない方がよい状態などについて解説します。
目次
片鼻呼吸(ナーディショーダナ)とは
ヨガの「片鼻呼吸」とは、片方の鼻の穴を指で閉じて行う呼吸のトレーニング法です。
呼吸は本来自律神経が司る「自然に行う、人がコントロールしないもの」ですが、意図的に呼吸をすることで、通常の呼吸をより深める効果が期待できます。
また、深い呼吸は全身に酸素を届けるだけでなく、自分の内側へと意識を向け、心に静けさをもたらしてくれる大切なものです。
ヨガと家族の関係にあるアーユルヴェーダという伝統的予防医学には、生命エネルギーの性質を表すドーシャという概念があります。
そのドーシャは3つあるのですが、すべてのドーシャのバランスを整え、心身のエネルギーを良い状態へ導く呼吸法として、この「片鼻呼吸」が知られています。
▼アーユルヴェーダについて以下の記事で詳しく解説しています。
片鼻呼吸で期待できる4つの効果
片鼻呼吸で期待できる、4つの効果をみていきましょう。
- 自律神経が整う
- ストレスが解消できる
- 睡眠の質が上がる
- 集中力がアップする
自律神経が整う
片鼻で呼吸することにより、交感神経の活性と抑制に働きかけられると言われています。
体を緊張させ、すぐ行動できるようにする交感神経と、体を弛緩させ、リラックス状態にする副交感神経を交互に刺激することで、活動と休息のスイッチ切替がスムーズに行えるようになるため、自律神経が整うのですね。
ちなみにヨガでは左鼻が陰のエネルギーの通り道と言われており、左鼻で呼吸することで副交感神経が優位に働き、リラックスできます。そして右鼻が陽のエネルギーの通り道と言われていて、右鼻で呼吸することで交感神経が優位に働くため、緊張したり興奮したりするとされています。
ストレスが解消できる
片鼻呼吸を繰り返すことで副交感神経が優位になると、脳血管を拡張させます。その結果、首から上の血行が促進されて頭に血液が回り、すっきりしてストレス発散につながります。
呼吸を深めることでイライラや不安を遠ざけることも、嬉しい効果ですね。
睡眠の質が上がる
夜眠る前に片鼻呼吸を行うことで、自律神経を整え副交感神経を優位にするため、リラックスして眠気が生じやすくなります。
質のよい眠りは心身の健康にとってとても大切なこと。どれだけリラックスして眠りにつけるかが、眠りの質には大きく影響します。
片鼻呼吸はベッドの上でもできるため、1日の終わりにトライしてみてください。
集中力がアップする
片鼻呼吸では片鼻ずつ均等に吸って吐いてを繰り返すため、集中していないと続けられません。毎日片鼻呼吸に取り組んでいくうちに、集中力が養われます。
片鼻呼吸を終了したときは集中力が高まっている状態であるため、そのままヨガのポーズに入るか、瞑想にチャレンジしてみることもおすすめです。
片鼻呼吸のやり方
自律神経を刺激する「片鼻呼吸」のやり方をみていきましょう。
まずは床の上にあぐらをかくように座るか椅子の上に座り、骨盤から上半身を真っ直ぐにします。左手は膝の上に置いて、右手のみを使ってください。
準備
片鼻呼吸では片鼻ずつ穴を塞ぎ、片方で吸ってもう片方で吐くを繰り返します。
その際の手の形は自分がやりやすいようにして構わないのですが、ヨガでは各指にもエネルギーがあるとされているため、できるだけ下の図のような手の形にして行うことがおすすめです。
右手の人差し指と中指を曲げ、あとの指は伸ばしましょう。
ちなみに手の指で形を作ること(印、封印、手相)を「ムドラー」と呼びます。手の指1本ずつに意味があると前述しましたが、その意味は以下の通りです。
- 親指:神・宇宙
- 人差し指:自我
- 中指:調和
- 薬指:活動的・情熱
- 小指:純質・怠惰
指や手の組み合わせによって自分の生命エネルギーに働きかけ、心身のバランスを整える技のひとつとして考えてくださいね。
やり方
- 椅子の上や床の上に座り、背筋を伸ばす。
- 右手の親指を上図のようにし、親指で右の鼻の穴を閉じ、左の鼻の穴で息を吸いこむ。
- 吸いきったら、左の鼻の穴も薬指で閉じ、1秒ほど両穴を閉じた状態で息を止める。
- 親指を離して右の鼻の穴でゆっくりと息を吐く。そのままで今度は右の鼻の穴で息を吸いこむ。
- 吸いきったら、右の鼻の穴も親指で閉じて、また1秒ほど息を止める。
- 薬指を離して左の鼻の穴でゆっくりと息を吐きだす。
- 2〜6で1サイクルとし、10サイクル繰り返す。
目を閉じ、呼吸に意識を向けながら取り組みましょう。慣れるまでは吸うと吐くは一定の長さ(6カウントで吐き、6カウントで吸う)で練習し、慣れてきたら吐く方のカウントを倍にして練習します(12カウント吐き、6カウント吸う)。
片鼻呼吸を避ける方がよい状態
片鼻呼吸は呼吸を意図的にコントロールするため、健康状態によっては避ける方がよい状態があります。以下の場合は、片鼻呼吸に取り組むのはやめましょう。
- 食後すぐ
- 鼻詰まりがある
- 健康状態に不安がある
食後すぐ
食後は食べたものの消化のために、胃が膨らんだ状態です。
片鼻呼吸をすると膨らんだ下腹部に圧力がかかり、消化に悪影響を及ぼす可能性があるため、食後すぐに片鼻呼吸することはおすすめしません。
寝る前や起きてすぐなど、お腹が空いているときに取り組むようにしましょう。
鼻詰まりがある
左右どちらかの鼻が詰まっていたり、両方の鼻の通りが悪い場合は無理をしないでください。
そのようなときは自然な呼吸ができないため、意識的に呼吸を行おうとして心身に負担がかかり、リラックスしにくくなります。
自然に鼻呼吸をしてみて「詰まっているな」「片方が苦しいな」と感じたときは、片鼻呼吸は諦め、腹式呼吸などに挑戦してみてくださいね。
健康状態に不安がある
以下のように、健康状態に不安がある方は片鼻呼吸に取り組まないようにしましょう。
呼吸することで横隔膜が動き、胸部や腹部に圧力がかかるリスクがあります。
- 高血圧の方
- 脳梗塞を経験した方
- 心疾患の方
- てんかんを経験した方
- 生理中や妊娠中の方
上記以外の健康状態の方でも、片鼻呼吸をして苦しいと感じた方はやめ、不安がある場合は主治医に相談してください。
心身の安定と健康のため、片鼻呼吸で新鮮な空気を全身に届けよう!
自律神経の中で、わたし達人間がコントロールできるものは呼吸のみです。ヨガでは呼吸やポーズを使って自律神経に働きかけ、心地よい状態へと促すことを目指します。
片鼻呼吸はヨガのポーズと同時に行わない独立した呼吸法で、リラックスしたいときに効果を発揮するため、忙しかった日の夜や心身が興奮していると感じたときなどにおすすめです。
毎日片鼻呼吸を続けることで興奮とリラックスのスイッチの切り替えをスムーズにし、心身の安定と健康を維持していきましょう。
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