- ホームスクーリング(ホームエデュケーション)とは
- ホームスクーリングと不登校について
- 積極的不登校と消極的不登校について
自宅やその地域を学習の拠点とするスタイルが「ホームスクーリング(ホームエデュケーション)」です。
親や周囲の大人が子どもに合わせた学習・教育をします。
近年、日本でもホームスクーリングについて見聞きする機会が増えていますが、実行するには情報が足りないと感じている方もいるでしょう。
この記事では、日本におけるホームスクーリングの立ち位置や、ホームスクーリングを選択した場合にどのようなデメリットが考えられるかについて紹介します。
なお、ホームスクーリングの種類やホームスクーリングを選択した場合のメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
目次
ホームスクーリングは学校を拠点としない学習形態
ホームスクーリングは学習の拠点を自宅、もしくはその地域とするスタイルのことです。
「学校に登校できない」わけではなく、子どもの意思で学校に通わなかったり、ときどき登校したりします。
日本では一般的に教育の場は学校とされていますが諸外国ではホームスクーリング(家庭学習)が国によって認められており、社会的知名度も高く、各段珍しいものではありません。
日本でのホームスクーリングの立ち位置は「不登校枠」?
イギリスやアメリカではホームスクールに対応した法律が明確にありますが、日本では正式なホームスクーリングに対応する基準はありません。
そのため現在は、ホームスクリーニングを選択するといわゆる「不登校」の枠組みで考えられることになります。
日本では「学校が教育を提供する手段である」との認識が強い
日本においては小中学校の12年間が義務教育と決められており、学校は教育法に則って子どもたちに教育します。
そのため前述したように、登校していない子どもの分類は日本では不登校というくくりです。
日本における「不登校」は何か問題がある場合として認識されることが一般的ですが、実際には積極的不登校と消極的不登校の2種類があります。
- 積極的不登校:子ども自らが「学校に行かない」と選択している
- 消極的不登校:子どもが何らかの原因で「学校に行くことができない」状態
積極的不登校児は、学校や人間関係、家庭状況において何ら問題がないにもかかわらず、学校に行かないと選択した子どもたちです。
その結果、自宅や地域にいる大人たちが教育を担当するホームスクーラーになります。
ホームスクーリングは違法ではない
家庭学習と聞くと、不登校児の受け皿のひとつとしてあるだけで国として認められているのか? と考える方もいるかもしれませんね。
しかし、日本の教育制度を支える法的根拠は「日本国憲法」や「教育基本法」、さらにその中の「学校教育法」ですが、これらを確認するとホームスクーリングは違法ではないと言えます。
日本国憲法による教育を受ける権利
日本国憲法の第二十三条により日本国民は学問の自由が保障されています。
さらに、第二十六条にはすべての国民はその能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有すると記されています。
参考:e-GOV「日本国憲法」
教育基本法による親の教育権の宣言
教育基本法の第十条は家庭教育に関するもので、父母その他の保護者は子どもの教育について第一義的責任があると記載されています。
これはつまり、親の教育権を宣言していると考えられます。
さらに教育基本法第十条においては、
「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」
引用:文部科学省「教育基本法」
とあります。
ここに「家庭教育の自主性を尊重しつつ」との記載があることから、ホームスクーリングは選択可能であると解釈できるため、違法にはならないと言えます。
ホームスクーリングのデメリット
さまざまな可能性を探りたいと考える家庭など、ホームスクーリングに興味がある方に向けて、実施した場合にどのようなデメリットがあるかを説明します。
ホームスクリーニングは前述の通り違法ではありませんが、日本ではまだ一般的であるとは言えません。
そのため以下のデメリットも理解し、慎重に検討することをおすすめします。
- 教育の質が担保できない
- 親子関係への影響
- 社会的つながりが希薄になりがち
- 費用が高額になることもある
- 卒業資格がもらえない
教育の質が担保できない
日本の学校の教師は、教員免許を取ることによって一定レベルの教育に関する知見を持っていると判断できます。
それに比べ、親や地域の大人が教育を見るとなると必ずしも「良い教育」ができるとは限りません。
一定レベルの教育ができると担保できないため、中には質がよくない教育を行ってしまうこともあるでしょう。
親子関係への影響
親であり担当教師でもあるということが、親子関係を悪化させる場合もあります。
「厳しい教師」と「安心して甘えられる親」を同一人物が担うことは、思うほど簡単ではありません。
また、親が先生になるタイプのホームスクーリングでは、子どもは親の思想などの影響を強く受けます。
家庭教師を雇う場合もありますが、いずれにしても学校の環境に比べると少人数で教育を行うことになるでしょう。
もし、その教育観が子どもにとって良いものであれば問題ありませんが、子どものためにはならないケースもあります。
学校教育では多様な価値観・考え方を持つ教員がいることで、接する子どもたちが特定の教育観に偏らないように制度が作られています。
ホームスクリーニングでは外部からの意見が入手しづらいという点が、子どもの人格形成に大きな影響を与えることもあるでしょう。
社会的つながりが希薄になりがち
学校にいくと同級生や上下さまざまな年齢の子ども、大人と触れ合う機会がありますが、ホームスクーリングでは他人と触れ合う機会が少なくなります。
対人関係やコミュニケーション能力は社会で必須のスキルです。そのため、何等かの手段で子ども同士や大人とのふれあいができるように配慮する必要があります。
現在の日本ではホームスクーリングが一般的とは言えませんので、近所の同じような家庭との交流が難しいかもしれません。ただし、「ゴーストスクール」などのサイトもあり、保護者同士・生徒同士の交流ができているケースも中にはあります。
参考:通信制高校ナビ「ホームスクーリングで学ぶとは?実践者に聞いた学び方と驚きのメリット」
費用がかかる場合もある
通信教育を家庭内学習で取り入れるところでは、海外の通信学校を選択する場合など、高額な費用がかかるケースがあります。
たとえばオンラインで通えるインターナショナルスクールは、英語やその他の国際的教養が身につくうえに海外の有名な大学を進学先に選べますが、その分費用は高額です。
卒業するまでにかかる費用が膨大になり、払えなくなって辞めるケースもあるため学校選びは慎重に行いましょう。
卒業資格がもらえない
完全な家庭内学習であれば、当然ながら学校の卒業資格は得られません。
小中学校は義務教育のため卒業資格は得られますが、高校の卒業資格を得るためには大検を受けるか卒業資格が得られる通信教育を受けるなど、何らかの行動が必要です。
ホームスクーリングを選択する場合は教育の質を考えよう
現在の日本において、ホームスクリーニングを選択するにはまだまだ課題が多い状況です。
一般的に認知されていないこと、教育の質の担保が難しいこと、コミュニケーションの機会が大きく減少することなどがあります。
特に最も重視したいのは、教育の質です。この問題をしっかり考え、カバーできるかどうかを見極めてから、ホームスクリーニングの実施決定をおすすめします。
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