肩コリや首コリ、腰痛などの対策には、その患部をストレッチでしっかりほぐすことが大切。しかし同時に、全身に影響を及ぼす部位である股関節を動かすことも必要です。
股関節周辺は人にとって「土台」となる部位であるため、ここを毎日ほぐすことでさまざまなメリットを得られます。特に、姿勢の悪さを人から指摘されたことがある方には股関節のストレッチはおすすめです。
ここでは股関節が硬くなる理由やストレッチをすることで得られる効果、そして具体的なストレッチ方法を紹介します。いずれも自宅でできる簡単なメニューばかりのため、ぜひ継続して取り組んでいきましょう。
目次
股関節が硬くなる理由
股関節はLPCHと呼ばれる腰痛骨盤股関節複合体の一部を指します。このLPCHは人体の中で最も大きな関節で、人のあらゆる動作(立つ、歩く、座る、しゃがむなど)に使われています。
参考:Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research Volume 108, Issue 2, April 2022, 103123
その股関節が硬くなってしまう理由は、多くの場合「座っている時間が長い」、そして「姿勢が悪い」からです。運動不足の方は、そのどちらにも当てはまる方が多いかもしれませんね。
日ごろからどの程度の範囲で股関節を動かしているかによって、可動域が決まってしまいます。つまり長時間座って過ごすことが多い人は、椅子に座るときの状態で筋肉が固まりがちということ。意識的に他の動きをしない限り、使われない筋肉はどんどん硬くなります。
同じ姿勢で長時間過ごしたあとは、筋肉は緊張して縮こまっている状態です。それを毎日積み重ねることで関節周辺の筋肉がどんどん硬くなり、「体が硬い」「足が大きく開かない」ことになります。
股関節ストレッチで得られる4つの効果
硬くなってしまった股関節をストレッチすることで、柔らかくしていきましょう。その結果得られる効果は次の4つが考えられます。
- 運動機能の向上
- 冷えやむくみの改善
- 姿勢改善
- 疲労が蓄積しにくくなる
運動機能の向上
股関節は足を動かして何かをするときのすべてに影響します。そのため、股関節が柔らかくスムーズに動くことで、両足の動きが軽やかかつ迅速になるのです。
股関節の可動域が狭ければ両足はさほど開きませんが、可動域が広くなれば大きく両足を開けられるようになります。両足がパッと開けば、何かに躓くといったことも減るでしょう。ケガの予防にも繋がりますね。
冷えやむくみの改善
股関節をよく動かすことで周辺の筋肉がほぐれ、血流促進が望めます。血流がよくなれば足全体が温まり、冷えやむくみの改善につながるうえに老廃物の排出がスムーズに行えるようになります。
そしてさらに、女性にとって嬉しいことが「重い生理痛の緩和」です。
股関節周辺にある筋肉のひとつ「骨盤底筋」は、子宮を下から支えています。この骨盤底筋が硬くなったり衰えたりすると、子宮をしっかり支えられないうえに冷えが襲い、重い生理痛につながります。
しかし、股関節を動かすことで骨盤底筋も刺激され鍛えられるうえに血流促進で温まるため、生理痛の緩和が 期待できます。
姿勢改善
ストレッチして股関節の動きがスムーズになれば、骨盤周辺の筋肉が鍛えられて骨盤が正常な位置に戻りやすくなります。骨盤は人の姿勢を維持する大切なもの。骨盤が正しい位置にあれば、奇麗な姿勢を取りやすくなるのです。
上半身を支える土台の筋肉がしっかりとすれば、猫背の改善やO脚の緩和などにも繋がります。
疲労が蓄積しにくくなる
股関節には体の老廃物を外へと排出する働きを持つリンパがあるため、リンパや血液の流れがよくなることで「乳酸」の排出を促します。
乳酸は筋トレやスポーツなどの激しい運動をすると生成される疲労物質のこと。この乳酸が流れやすくなるため、結果的に疲労が蓄積しにくい体になっていきます。
また、ボイストレーナーの鳥山さんによると、股関節をストレッチすることで呼吸に必要な外腹斜筋が緩むため、呼吸が深くなるそうです。そのため全身に酸素が届きやすくなり、体全体が正常に働けるようになるため疲労が蓄積しにくくなります。
自宅でできる! 効果的な股関節ストレッチ方法
自宅で簡単かつ効果的な股関節ストレッチに取り組みましょう。ここでは毎日行ってほしいメニュー、股関節周辺を伸ばして刺激し、ほぐすストレッチを4つ紹介します。
- 膝押しストレッチ
- 両足前後開きストレッチ
- 両足横開きストレッチ
- 上体倒しストレッチ
他の部位のおすすめストレッチはこちらを参考にしてください。
膝押しストレッチ
床に座って両足の膝をゆっくりと押すストレッチです。
【膝押しストレッチのやり方】
- 床の上に座り、背筋を伸ばして両ひざを開き、両足の裏を合わせる。
- 合わせた両足裏をできるだけ股の方へと引き寄せる
- 両手で両ひざを持ち、息を吐きながらゆっくりと床へむけて押す
注意点は、視線を前へ向けて背筋を伸ばすことです。膝は床につかなくてもかまいませんが、足はしっかり体に引き寄せて行ってください。両ひざを床につけられる方は、そのまま上体を前へ倒してみましょう。
両足前後開きストレッチ
両足を前後に大きく開いて行う股関節のストレッチです。
【両足前後開きストレッチのやり方】
- 両足を拳1個分ほど開け、つま先を前に向けて立つ。
- 背筋を伸ばし、視線は前を向く。
- 右足を大きく前へ置き、両足を前後に広げる。
- 右膝が90度の角度で、左足の膝からつま先までが床につくまで腰を下ろす。
- 20秒ほど左の足の付け根が伸びていることを感じたら、元の態勢に戻る
- 左右を交代して同様に行う。
注意点は、背中を丸めないことです。上体は地面に対して垂直を保ちましょう。
両足横開きストレッチ
立っている上体から股関節を開くストレッチです。
【両足横開きストレッチのやり方】
- 両足は肩幅より少し広めに開き、背筋を伸ばして立つ。
- 両手を両ひざにあて、右膝を曲げて少々前傾姿勢になりながら、左股関節と左内ももを20秒間伸ばす
- その後、床につけた左足の裏をつま先方向へずらすようにしてもう20秒伸ばす。
- 元の体勢に戻し、右側も同じように行う。
痛気持ち良いと感じる程度に伸ばしましょう。
上体倒しストレッチ
椅子に座って股関節を伸ばすストレッチです。職場でも休憩時間にやってみましょう。
【上体倒しストレッチのやり方】
- 椅子に座って背筋を伸ばし、右足の足首を左足の膝の上にのせる。
- 右手で右膝、左手で右かかとを軽く押さえる。
- 背筋を伸ばしたまま、上体を前へと倒し、そのまま1分間キープする。
- お尻と腰回りの筋肉が伸びているのを感じたら、右足を元へ戻す。
- 左足も同様に行う。
ストレッチ中に、息を止めないように注意しましょう。両手で膝を強く押さないようにしてください。手は膝や足がずり落ちないように止めるといったイメージです。
毎日の股関節ストレッチで軽やかかつスムーズに!
股関節は人の体を支える土台に当たるものです。ここが柔らかく保たれると両足の動きがスムーズになるため、歩行やしゃがむといった行動がやりやすくなるうえに、段差に躓くなどの急な動きにも反応できます。
股関節周辺の筋肉をほぐすことでリンパや血流の促進効果があるため、体内に溜まった老廃物や不要な水分を正常に排出でき、体が軽く感じるようになるでしょう。
痛みがあるときは無理をしてはいけませんが、毎日ストレッチするようになると数日で股関節が柔らかくなってくるのを感じられるはず。ぜひ少しずつでも、股関節のストレッチを続けてみましょう。
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