人は体を動かすために、身体中の筋肉を収縮させ、体内のエネルギーを消費しています。
座ったり、立ったり、歩いたり、走ったりなどの日常動作の全てに筋肉が動き、その都度エネルギーが消費されていますが筋トレも同様です。
敢えて筋肉に高負荷をかけて運動させる筋トレは、疲労感も運動の強度に比例して高くなりますので、筋トレを頑張った後はどっと疲労感を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、なぜ疲労感を感じるのか、筋トレ後の疲労感を解消する方法や筋トレする方は特に気をつけたいオーバートレーニング症候群について紹介します。
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目次
なぜ運動をすると疲労を感じるのか
普段の生活ではそれほど激しく体を動かすことがないため大きな疲労感を感じることは少ないかもしれませんが、運動中やスポーツの最中やその後に疲労感を感じやすくなります。
これは、体に乳酸が体内に蓄積されることで疲労を感じると言われています。
では、なぜ人間は激しい運動をすると疲労感を感じるのか、そもそも乳酸が体内に蓄積する理由について以下から解説していきます。
運動時に体内で生成される乳酸とは
スポーツや運動の際に疲労で体の動きが鈍くなると「体に乳酸が溜まっている」と言われていました。
人間は筋肉を動かすために糖質の一種である筋グリコーゲンを分解し、アデノシン三リン酸(ATP)を生成します。
このATPが生成される過程の中で乳酸が代謝産物として生成され体内に蓄積されます。そのため「乳酸が体内にたまると体が疲労する」と言われるようになりましたが本来、乳酸は筋肉を動かすためのエネルギー源であり、逆に疲労を防ぐ性質を持ちます。
ではなぜ、「乳酸=疲労」のようなイメージを持たれるのでしょうか。
今は「乳酸=疲労物質」ではないと考えられている
運動やスポーツの経験がある方は、乳酸が疲労を招いていると思っている方も多いのではないでしょうか。
ですが、現在では「乳酸は疲労に直接的な原因ではない」と考えられています。
原因は体内に貯蔵されているアデノシン三リン酸(ATP)の貯蔵量が非常に少ないためと言われており、運動をするとすぐに消費してしまいます。
そのため運動を継続するさせるために、体内ではアデノシン三リン酸の消費と再生成を繰り返し、その都度乳酸も生成されるため、乳酸が疲労に直接原因があるのでは、と言われていたため「乳酸=疲労」のようなイメージを持たれていたのではないでしょうか。
乳酸の
などの代謝物質が筋肉内に蓄積することで、筋肉疲労を引き起こしていると言われています。
運動やスポーツなどをすると疲労を感じるのでしょうか。
それは主に以下の要因により疲労を感じると言われています。
- 筋肉の疲労
- エネルギー消費
- 代謝物質の蓄積
- 体温の上昇
- 神経系の疲労
筋トレやスポーツをしている方は、なぜ疲労が発生するのか根本的な原因を理解することによって、トレーニングや練習の取り組み方や怪我の防止に役立つかもしれません。
筋肉の疲労
筋肉の疲労は筋繊維が損傷することで筋肉が疲労するため、通常時よりも筋力を発揮しにくくなります。
人は体を動かすために、さまざまな筋肉を伸縮させて動作します。
普段の生活ではそれほど筋肉の疲労を感じることはありませんが、普段よりも体を動かす機会が多かったり、スポーツや筋トレなどを行うことで筋肉の疲労は感じやすくなります。
筋肉の可動範囲や運動強度などによりますが、筋肉繊維に大小の損傷が生じます。
エネルギー消費
筋トレやスポーツなどの運動をおこなう際、体はエネルギー源となる糖質や脂肪を利用し消費されます。
そのため、運動中に体内のエネルギーが不足すると、疲労を特に感じやすくなり、疲労感が増大します。
乳酸などの蓄積
体を動かすには体内の糖質を利用してエネルギーを生成し、消費すると前述しました。
体温の上昇による体内の水分不足
体を動かしたり、軽く運動をすると徐々に体が熱くなり、体温が上昇します。
人間の体は体温が上がると、体を冷やそうとして汗を出し熱を放散させようとしますが、汗をかくことによって体内の水分や電解質を消費しますので、体内の水分バランスが崩れたり水分不足を引き起こします。
その結果、血中の水分量が減少しサラサラな血液からドロドロの血液になり、血流が悪化します。血流が悪くなると、体内の細胞に栄養や酸素、水分などの供給が遅れてしまい細胞が正常に働くことができなくなります。
神経系の疲労
運動には、中枢神経系や末梢神経系が深く関係します。
これらの神経系は、運動中に継続的な信号を送り続けることで疲労を引き起こす可能性があります。
筋トレ後の疲労感は筋疲労! 疲れをためないようにするには?
トレーニング後には、誰にでも筋疲労が起こります。日常生活では経験しない負荷を筋肉に与え、筋線維の断裂を起こすことによる疲労ですね。
疲労は自分でどの程度溜まっているか判断はできませんが、だるさを含む全身の倦怠感や筋肉痛、筋肉の張りなどで「疲れたなあ」と感じたらそれがサインです。クールダウンや休養を取るようにしましょう。
筋トレ後は血流促進・休養・栄養摂取が必須
筋トレ後では以下の4つの行動もセットで行うことが大切です。
- クールダウンを行う
- 同じトレーニング部位は48~72時間程度空ける
- 毎日同じ筋トレメニューをしない
- 栄養を摂る
筋肉に強く負荷がかかったことで筋線維が破れ、それを修復することで以前よりも強く太い筋線維となります。その修復のためには血流の促進、休養と栄養摂取、水分補給は必須です。もしも疲労が残っている状態で同じ部位に負担をかけ続けると、トレーニング効率が下がるばかりでなく、慢性疲労症候群や肉離れ、腱の損傷などの原因になります。
そのため、筋トレ後はクールダウンをすること、同じ部位のトレーニングは48〜72時間ほど空け、毎日同じ筋トレメニューに取り組まないよう注意しましょう。
また、食事でしっかり栄養を摂ることも大切です。タンパク質、ミネラル、ビタミンなど健やかな体を作るために必要な栄養素は、3回の食事で摂るようにしてくださいね。
ちなみに、タンパク質やビタミンなどは、体に吸収できる一度の量に限度があります。そのため、1回ではなく、1日の食事を合わせて摂取することがおすすめです。
血流促進のために筋トレ後に行いたいクールダウンとその種類
クールダウンには動的なものと静的なもの、そしてアイシングの3種類があります。
動的クールダウン:軽いジョギングなどの有酸素運動
静的クールダウン:ストレッチやヨガ
アイシング:負荷をかけた場所を冷やす
筋トレは基本的に筋肉を収縮させることがほとんどであるため、トレーニング後の筋肉は元の状態よりも柔軟性が低下している状態です。そのため筋肉を伸ばすことによって血流を促進し、修復のための栄養を行き届かせなければなりません。
クールダウンでは、あくまでも軽い有酸素運動やストレッチ、ヨガなどがおすすめです。呼吸を落ち着かせ、全身の血流促進をしたうえで、食事で栄養を摂って夜はゆっくり眠りましょう。
また、局部は少量ながらも炎症状態にあるため、そこを冷やすことで炎症を軽減できます。冷やすことによって一時的に血流は悪くなりますが、冷やされたところを元に戻そうとする動きで血流が増えるため、アイシングの後にストレッチを行うとより血流促進に効果的です。
10日以上筋トレの疲労感が抜けないのは体のSOS!
筋トレで負荷をかけたのに休まず栄養も摂らずといった状態を続けると、疲労が蓄積してオーバートレーニング症候群になるケースがあります。
筋トレによる疲労には、エネルギー・ホルモン・筋肉・神経の4つの疲労があります。その中で最も回復に時間がかかるのが「神経の疲労」ですが、筋トレによって酷使された自律神経の疲労回復には数日から10日程度必要と言われています。
そのため、10日以上筋トレの疲労感が抜けない場合は体がSOSを発していると考え、しっかり休むようにしましょう。
オーバートレーニング症候群とは
オーバートレーニングは日常的にトレーニングを続けた結果、疲労が蓄積して徐々に回復する力が弱くなっていく症状のことです。
軽度であれば日常生活に支障はなく、ジョギング程度の軽い運動であればできるものの、スピードをあげられなくなります。中程度では軽い運動でも体が辛くなり、日常生活でも疲労感や立ち眩みを感じることがあるでしょう。そして重度になるともはやトレーニングはできず、日常生活にも支障がでてきてしまいます。
オーバートレーニング症候群のチェック項目
オーバートレーニング症候群かどうかを判断するための、いくつかの代表的な症状を紹介します。
- 休憩時の心拍数が高い
- 食欲がない
- 体重や体脂肪率が急激に減少する
- イライラや不安感がある
- 寝つきが悪い
- 筋肉痛の回復が遅い
- 筋トレで同じメニューをこなせない
人によって症状はさまざまですが、上に記載した項目にいくつか該当するようであればオーバートレーニングの可能性があります。そのままいつもの通りにトレーニングを続けるとどんどん悪化することが考えられますので、一度立ち止まり、体のために休むようにしてください。
筋トレの疲労感が抜けない場合は休息をしっかり取る
蓄積した疲労感から回復するには休息以外の方法がないため、しっかり休むことが必要です。ただしオーバートレーニング症候群になっている場合や症状によっては数日では収まらず、回復までに数カ月から数年かかる場合もあるようです。
また、休息をしっかり取りながら以下の対処法も試してみましょう。
- ハードなトレーニングは中止する
- 基礎的なトレーニングは継続OK
- 食事で栄養を摂る
- 睡眠時間を確保し睡眠の質を上げる
ハードなトレーニングは中止する
マシンや器具を使って負荷を高めるトレーニングは原則禁止です。疲れがある状態で無理にトレーニングを行うと、アイテムを落としたり変に力が入ったりしてケガをする恐れがあります。
基礎的なトレーニングは継続OK
自重トレーニングのスクワットや腕立て伏せなどは継続して構いません。しかし、それも負荷は強めず、あくまでも筋肉を維持するといった目的で行うようにしましょう。
食事で栄養を摂る
体の回復のために食事内容に意識を向け、タンパク質やミネラルといった栄養をしっかり摂りましょう。主食(お米)よりも主菜(肉や魚)を優先して食べることがおすすめです。
栄養補助食品(サプリメントなど)を利用する方法もありますが、顎を動かして咀嚼することで顔の筋肉を刺激し血流改善をしているため、基本的には食事から十分な栄養を摂れるように努力してみてくださいね。それでも足りないと感じられる場合は、栄養補助食品を使うようにしましょう。
睡眠時間を確保し睡眠の質を上げる
疲労回復には睡眠が絶対に必要です。寝室の環境を整え、睡眠サイクルを体に覚えさせるため毎日同じ時間にベッドに入るようにし、眠る直前の食事などは胃腸の負担になるため控えてください。眠る前に湯舟に浸かって体温を上げ、お風呂上りにストレッチをすることもおすすめです。
また、睡眠のゴールデンタイムは成長ホルモンが最も分泌される夜の10時から朝の2時までと言われています。そのため、できれば夜10時には眠れるように調整してみましょう。
人によってベストな睡眠時間は異なりますが、一般的には6〜7時間の睡眠が推奨されています。とは言え、短時間であっても睡眠の質が良ければ心身は回復できます。睡眠の質を上げ、しっかりと休みましょう。
参考:大塚製薬株式会社「睡眠リズムラボ 最適な睡眠時間って何時間?」
筋トレ後に疲労感が抜けない場合は注意!体の状態を見極めよう
筋トレ後に体から疲労感が抜けない場合は、以前の疲れが蓄積している状態かもしれません。そのまま疲れを放置してトレーニングを続けると、力がうまく出せずにトレーニング中にケガをしてしまったり、慢性的な疲労症を引き起こしてしまったりする可能性があります。
疲れが取れ切れてないなと思ったら、とにかく休むことを優先してください。
また、疲れてご飯を食べる気力がないという場合でも、栄養素を体に満たすために食事は必要です。どうしても食べられないという場合には、市販のプロテイン商品やサプリメントなどを使って足りない栄養分をカバーしましょう。
疲労度は外からは測れません。自分で疲れているなと判断したら、早い内に対処することが大切です。
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